怒りを忘れてエールを送る

最後に、アマゾンのオペレーターに話を戻そう。

今日、日本でカスタマーサービスに電話をかけると中国やタイのコールセンターにつながることがあるように、イタリアでもオペレーターの賃金が安い外国につながる場合がある。

特にルーマニアは、東欧圏には珍しく自言語がラテン語系なので、イタリア語をすらすら話す人が少なくない。そのためイタリア語オペレーターが多い国のひとつになっているのだ。

今回応対してくれたオペレーターが「差し支えなければ、どちらのご出身かうかがえませんか?」とボクに聞くので、「日本人です」と答えると、「フランス人が話すイタリア語のようなので、フランスの方かと思いました」とのたまう。日頃フランス語を話せば「あんた、イタリア住んでんだろ。なまってるよォ」とフランス人に即刻笑われるボクゆえ、なんだか頭がこんがらがってしまった。

ボクはいたずら半分に逆に質問することにした。

「イタリア語お上手ですねえ。イタリア人ですか? それとも……」

すると彼女は「生粋のルーマニア人です」と笑った。そして「かつてボローニャに10年間住んでいました」と教えてくれた。

一方ボクは、イタリア在住21年。クルマの歴史をイタリア語で話せと言われたら、適当な時間続けることはできるが、もし「アマゾンのクレーム対応をやれ」と言われたら、たとえマニュアルを渡されても彼女のような巧みさでは対応できない。アマゾンへの怒りも忘れ、ルーマニア人オペレーターに対しては、同じ「イタリア語を使う外国人」としてエールを送ってしまった。

ちなみに、この原稿を書いているいま、返金手続きが終わって4日が経過したにも関わらず、なぜかボクのもとには「ロッカーに商品が入りました」というメッセージが舞い込んだのであった。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=関 顕也)

こちらはパリのリヨン駅で。スーパーマーケットをはじめとする数社が、同一のロッカーを介して商品を顧客に渡せるようになっている。イタリアやフランスでロッカーが普及するかどうかは、維持管理の質にかかってきそうだ。
こちらはパリのリヨン駅で。スーパーマーケットをはじめとする数社が、同一のロッカーを介して商品を顧客に渡せるようになっている。イタリアやフランスでロッカーが普及するかどうかは、維持管理の質にかかってきそうだ。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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