「三菱ショーグン」で豪邸を襲撃

警察はカトラー家が犯罪集団だということを知っている。常に容疑者として捜査線上に浮かぶが、彼らは決定的な証拠を残さない。疑わしいだけでは、牢屋(ろうや)にぶち込むことはできないのだ。微罪で逮捕することもあるが、ガンとして口を割らないから起訴には持ち込めない。釈放されると、コルビーは警察に嫌がらせを仕掛ける。黄色にペイントして側面に“Fuck gavvas”と書いたオンボロの「ローバー・メトロ」で街を走り回る。下品なだけでなく、明らかに挑発的なフレーズだ。腹を立てた警官がパトカーで追ってくるが、チャドのアクロバティックな運転にはついてこられない。

驚くのは、この映画にはモデルがあるということだ。ロンドンの北西に位置するコッツウォルドで、裕福な家を襲撃して金品を盗んでいた犯罪一家が実在したという。アウトローを気取っているが、実のところ社会に適合できないハズレ者である。カタギの生活はできないから、家族の結束は固い。

カトラー家では知性に価値を認めない。父親の方針で、チャドはほとんど学校に行かなかった。しかし、息子には自分たちのような人生を歩んでほしくないから学校に通わせている。コルビーは孫に犯罪術を教え込むことが何よりも大切だと思っていて、ことあるごとに2人は対立する。チャドの息子はどちらかというとおじいちゃんの考えに賛成しているようだ。子供だから、勉強が嫌いなのは仕方がない。

チャドは抵抗を試みるものの、結局は父親に逆らえない。最後の大仕事を引き受けてしまう。犯罪から足を洗いたいと思っているのに、頼まれると断れないのだ。夜中に向かったのは、州総督の豪邸である。英国版「三菱パジェロ」の「ショーグン」に乗ったままリビングルームに突っ込む。獲物を手に入れた後は火を付けて燃やすという乱暴で粗雑な泥棒だ。

© BFI, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION AND TRESPASS AGAINST US LIMITED 2015
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第165回:イギリスの犯罪家族は日本車がお好き?『アウトサイダーズ』の画像拡大
 
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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