ドレスコードは水着とサングラス?

昨年のオーストリア・ツェル・アム・ゼー会場で「次はイタリア!」と発表されたとき、各国から集まった参加者からはオリンピック開催地が決定したときと同じような大きな歓声と拍手がわいた。
いっぽうでイタリア在住のボクは、心配がぬぐえなかった。これまでの会場であるオーストリアのオフシーズンのスキーリゾートは、涼しく、すべてが整然とし、洗練されていて、極めて過ごしやすかったからだ。
それに対して、暑いうえ混雑するイタリアにおけるハイシーズンのイタリアンビーチリゾートを想像すると、果たして各国のスマーティスト(スマート乗り)たちが満足するか、不安だったのである。そんな去年を思い出しながら、ボクはリッチョーネに向けてステアリングを切った。

街は予想どおり大勢の観光客でにぎわっていた。ホテルのエレベーターで乗り合わせた老婦人に聞けば、ここ10年来毎年リッチョーネで夏を過ごしているという。伝統的なヴァカンツァ(バカンス)のスタイルを続けている人は、今もいるのだ。
ショッピングストリートに出ると、そちらは若者たちでごった返していた。イタリアでは7月にある「マトゥリタ」といわれる高校卒業資格試験が終わると、多くの若者が仲間や恋人と海へと旅立つ。リッチョーネは卒業旅行の人気スポットでもあるのだ。

まずは国際会議場に設けられたプレスセンターに顔を出す。スタッフの女性から渡されたのは、なんとサンスプレーだった。それはともかく、教えてもらったとおりに行くと、メイン会場はビーチサイドのピアッツァーレ(広場)に設営されていた。
心配していた渋滞がさほどないのでスタッフに聞くと、アトラクションがない時、参加者には高速インター脇のパドックにクルマを止めてもらい、代わりにシャトルバスを運行するという手段がとられていた。引き続きオーガナイズしているのがオーストリアのPR会社であるおかげで、なかなか気が利いている。

サンオイルの香りと、名物の薄焼きスナック「ピアディーナ」の香りが混じるなか、会場をめぐる。多くのオーナーたちは暑い日中、早くもステージ裏にあるビーチで遊んでいた。「ドレスコードは水着とサングラス」といっても過言ではないムードだ。なるほど、さきほどのサンスプレーの意味がわかった。
リッチョーネの海は、沖に向かって100メートル近くにわたって遠浅で、水も心地よい温度だ。
参加者たちと一緒に砂浜に寝転がっていると、「アクア、ビッラ、ビビテ、ココ〜っ(ミネラルウォーター、ビール、飲み物、ココヤシ)」の声とともに、物売りのおじさんがやってくる。小っ恥ずかしくなってしまうくらいコテコテの、1970年代にタイムスリップしたような海岸ムードである。

それでもオーストリアから来た参加者は、「このノンビリした雰囲気がイタリアなんだよねぇ」と満足そうである。たとえクソ暑くても、たとえコテコテでもいい。在住者のボクが鈍感になってしまっているイタリア風情を、彼らは楽しんでいたのだ。

22カ国から約1500人のスマーティスタたちがやってきた。
22カ国から約1500人のスマーティスタたちがやってきた。 拡大
ステージの裏はビーチ直結。
ステージの裏はビーチ直結。 拡大
夏のリッチョーネはまさに不夜城。あちこちに「スマート」でナイトライフを楽しむ姿が。
夏のリッチョーネはまさに不夜城。あちこちに「スマート」でナイトライフを楽しむ姿が。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。20年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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