外国のスマーティスタたち
金曜夕方になると、メインストリートには参加者たちのスマートが並べられ、オフィシャルオープニングが開催された。
ちょうど1年前の2010年8月にスマートブランドの責任者となったアンネッテ・ヴィンクラーがリッチョーネの市長とともに登場した。2人が乗ってきたのは、2011年ジュネーブショーに参考出品された「スマートEVロードスター」だ。
ヴィンクラーが「スマートにとって、イタリアは世界中で最も重要な市場です!」と話すと、スマート・クラブ・イタリアの集団からおたけびが上がった。
ちなみに彼女が別会場で話したところによると、イタリア最大の市場であるローマのスマート普及率は、住民43人あたり1台という高いパーセンテージになるという。過酷な駐車事情の首都で、スマートは極めて有効なモビリティとして評価されていることがわかる。
ヴィンクラー氏がさまざまな国の言葉で歓迎を述べるたび、会場のあちこちにいるクラブのメンバーから歓声が上がる。後日の発表によると、今回の「スマートタイムズ11」イタリア・リッチョーネ編には、22カ国から約1500人がそれぞれのスマートで参加したという。
昼間にビーチで会ったオーストリア人が再びいたので呼び止めると、「イタリアは、料理もうまい! 最高!」と言って、リッチョーネの街に消えていった。
けだるい海風、友達と路上でいきなり歌いだす野郎たち、蛍光ブレスレット売り……など、イタリアに住んでいると、目をそむけがちであるそうした、ちょっと怪しいムードが、外国から来たスマーティスタたちにとっては逆に刺激的なようだ。今回のイタリア編に関するボクの心配は、まったくもって杞憂(きゆう)だった。
ふと会場の片隅を見ると、「Just married」と書かれ、後部に空き缶を付けたスマートがあった。聞けばポーランドからやって来たミハウ&マルタ組のクルマだった。2人ともスマート・クラブ・ポーランドのメンバーだという。
なんだよー、披露宴に呼んでくれたなら、「え〜、ふたりの愛はトリディオンセーフティセルのごとく堅く」と、ファンしかわからないネタを一席ぶってあげたのに。(後編につづく)
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
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写真で見る、「スマートタイムズ11」はこちら。

大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。20年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』、『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。
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