公共交通機関も一因

報告書は文末で、「高齢者に対する安全教育と啓蒙(けいもう)」「免許更新時を対象にした高齢者への告知の検討」「高齢者運転に対する地元警察の知識の更新」、そして「公共交通機関における高齢者優待制度の拡充」などを訴えている。

参考までにイタリアの運転免許更新について記すと、50歳までは10年ごとだが、それを超えると5年ごと、そして80歳を超えると2年ごとに短縮される。

ボクが思うに、公共交通機関の状況改善が喫緊の課題だろう。

例えばボクが住むシエナは、人口5万3000人の県庁所在地である。にもかかわらず、バスの主要路線が動き出すのは朝7時台からで、夜は20時台には終わってしまう。運営しているのは会社組織とはいえ事実上の州営なので、利用者の声が反映されにくい。

タクシーの数も全部で50数台と極めて少ない。割り算すると、1000人に1台程度しかないことになる。背景には、タクシーの個人営業ライセンスが当事者間で売買されることがある。ライセンス相場が下がることを嫌うドライバーたちの組合は、市がタクシー数を増やそうとするたびストライキなどの形で対抗する。

高齢者が自ら運転しなければならない条件が多すぎるのである。

元事務員で70代のピエロ氏と「フィアット・テムプラ」。
元事務員で70代のピエロ氏と「フィアット・テムプラ」。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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