運転し続けるベビーブーマー

第2次大戦後の都市計画も、高齢者が免許を手放せない状況を生んだといえる。

イタリアの多くの自治体では、1970年代から80年代初頭に郊外型住宅地が建設された。参考までにいうと、ベルルスコーニ元首相は政界進出前、ミラノ郊外に住宅地を建設することで財を成した人物である。人々はより広い家を求めて、中世ルネッサンス以来の旧市街を捨て、そちらに移り住んだ。

多くは戦後ベビーブーム世代で、当時30代だった。自らステアリングを握り、安定した経済を背景に1人1台所有は当たり前。公共交通機関の充実など求めなかった。自治体も、彼らの“クルマ移動主義”にあぐらをかいて、公共交通機関網の充実を怠った。

そして時は過ぎ、ベビーブーマーは今70代になった。前述のようにバスのサービスが乏しい中で、今でも運転し続けるしかないのだ。イタリア中央統計局の発表によれば、この国の高齢人口は、2015年にはEU平均の28%を大きく上回る34%に達しているのにだ。

筆者の知人であるアンドレア(写真右)と、そのお母さん(左)。彼女の愛車は「インノチェンティ・ミニ」。
筆者の知人であるアンドレア(写真右)と、そのお母さん(左)。彼女の愛車は「インノチェンティ・ミニ」。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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