燃える女を撮影するカメラマン

映画版『去年の冬、きみと別れ』は、小説版といくつか設定が異なっているところがある。複雑なからくりを映像のみで見せなければならないのだから当然だ。根幹のストーリーや犯罪の構成は変わっていない。主人公は若手記者で、猟奇的な犯罪を行ったとされる木原坂雄大という男を調べている。チョウの写真で賞を取った芸術派カメラマンだ。

彼は女性を焼死させた疑いを持たれている。生きたままで燃えているところを撮影したのだ。彼は芥川龍之介の『地獄変』を読み、芸術のために自分の娘が焼け死ぬさまを冷静に観察した主人公に共感している。木原坂はなぜ人が燃える写真を撮ることに執着するのか。記者は彼の周辺を取材し、真相に迫っていく。

小説では章立てが2つの要素に分かれている。“僕”が物語る本体部分の間に、“資料”が挟み込まれているのだ。拘置所の中の木原坂が姉の朱里や正体不明の人物に送った手紙、子供の頃の作文、被害者女性のツイッターなどである。すべての情報が明かされているが、その役割が不明なので読者は宙づりにされたままだ。

木原坂は2件の女性焼死事件に関わっていて、小説では拘置所にいる彼を記者がインタビューする場面から始まる。映画では2つ目の事件はまだ起きておらず、1つ目の事件は事故扱いとなって木原坂は自由の身だ。演じているのは斎藤 工。セクシー俳優と呼ばれる彼は、性的倒錯傾向を持った天才の役柄が似つかわしいということなのだろう。

若手記者の耶雲恭介役は岩田剛典。EXILEメンバーとしては異端派の色白な優男で、一途(いちず)で線の細い印象が買われたのだ。彼の婚約者である松田百合子には山本美月をキャスティング。『CanCam』専属モデルを務めていたこともある美女だ。耶雲が企画を持ち込んだ編集部のデスク小林良樹は北村一輝。一癖あるキャラクターを演じることが多い。最近では、『羊の木』で殺人を犯した元受刑者の役がハマっていた。

©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会
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第167回:中古の国産ワゴンに乗っているのはいい人か?『去年の冬、きみと別れ』の画像拡大
 
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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