悩みどころのジュネーブ行き
東京に次いで俎上(そじょう)に載せたのが、今回のジュネーブだった。
ショー自体のキャラクターというか、立ち位置が微妙になってきたからだ。欧州自動車ビジネスをリードするドイツ系ブランドは、フランクフルトに軸を置くようになった。自動車のCASE化が進む今日、自動運転や電動化に関してはラスベガスの「CES」、コネクティビティーについてはバルセロナの「モバイルワールド・コングレス」のほうが勉強できる。北京や上海のショーは、世界一の自動車市場を追う上で欠かせない。
一方ジュネーブは近年、大手が主力モデル発表の場に選ばなくなった代わりに、高級車や高性能車が目立つようになり、どこかチューニングカーショー的なムードを帯びてきた。
再び財布の話題に戻って恐縮だが、会期中のホテルの宿泊料は暴騰する。ジュネーブという小さな街に世界中の関係者やジャーナリストが押しかけるためだ。たとえ風呂・トイレ共同のようなビジネスホテルでも、円換算で1泊1万円以下は無いと思ってよい。小池百合子東京都知事の言葉を借りれば、「ワイズ・スペンディング」からは程遠いのだ。
幸い飛行機はCESのようには値上がりしない。だが、いざ調べてみると、従来あったわが家に最寄りのフィレンツェ~ジュネーブ直行便が廃止されていた。あるのは面倒なチューリッヒ経由である。
また、自動車に対する個人的な関心という点でも、ほかのさまざまなショーで自動運転へのロードマップが見えてきた現在、次にクルマを買うのは、レベル3とはいわずとも、レベル4の自動運転が実現するまでじっと待っていたい。
そのような背景から、冒頭のように最初は行くマインドにならなかった今年のジュネーブだった。しかし考えてみると、このショーを訪れるようになって今年でちょうど15年目だ。キリがいい。開幕の約1週間前、「今年を最後にしよう」と心に決め、出張することにした。

大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』、『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。
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