熟練デザイナーたちも元気
そしてジュネーブといえば、カロッツェリアの競演である。
ジョルジェット・ジウジアーロ氏が息子のファブリツィオ氏と共に率いる新会社「GFGスタイル」は、2年目の出展だ。今回は風力発電設備市場でGEに次ぐシェアを誇る中国のエンビジョン社とのコラボレーションで、EVコンセプト「Sibylla(シビラ)」を公開した。パッケージングの天才であるジウジアーロ氏の才能は遺憾なく発揮され、「アウディA8」より短い全長の中に、同車を上回る室内空間を実現している。ポストSUV時代への提案といえる。
ジウジアーロ氏によれば「完全自動運転が実現するのは、もうしばらくかかる。こうしたハイクラスのクルマを求めるユーザーは、まだ自ら操縦する喜びを求めるはずだ」ということで、ステアリングホイールは残されている。
GFGスタイルは、まだジウジアーロ氏がベルトーネのチーフデザイナーだった1963年にデザインし、今は彼の所有になる「シボレー・コーヴェア テスチュード」も一緒に展示した。
プレゼンテーションがひと段落すると、ジウジアーロ氏は、テスチュードを前にして、筆者にしばし昔話を披露してくれた。その内容については、また近いうちに記そう。
スイスのカーデザイナーでカロッツェリアの創設者であるフランコ・スバッロ氏の姿も見られた。彼の場合、ジュネーブ出展は46年目だ。今年の作品は、「4×4+2」と名付けられたSUVである。“+2”とは、左右両サイドに装着されたスペアタイヤを指す。
それはスイッチひとつで上下し、かつ動力源となる電気モーターが装着されているので、メインのタイヤがパンクした場合でもタイヤ交換することなく走行を続けることができる。「(ラリードライバーの)セバスチャン・ローブがタイヤのバーストで勝利を逃したのを見て思いついた」のだそうだ。
これまでも、ハブやスポークがない中空ホイールといった奇抜なアイデアを提示してきたスバッロ氏。その発想力はいまだ衰えていない。

大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』、『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。
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