メーカーが刑事責任を問われることは少ない

次に刑事的な責任を考えてみよう。通常の交通事故では主にドライバーが処罰の対象であり、メーカーの責任が問われることはまれだ。現行の道路交通法では、第4章で「(安全運転の義務)第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及(およ)び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定められている。これは、公道上での自動運転車の実験においても同様だ。

国内では、公道上で自動運転車の実験を行う際のガイドラインが定められており、公道での走行の前に、テストコースで十分にシステムを検証することや、実験車両に乗車するドライバーに十分な訓練を施すこと、自動運転のシステムをオーバーライド可能(人間の操作を優先する)にすることなどが求められている。

こうした前提を基に今回の事件を考えてみると、まずUberに民事的な賠償責任があるのは間違いない。実際、「Uberと被害者の遺族との間で、3月29日までに和解が成立した」と報道されている。次に、刑事的な責任についてはどうか。これも詳細な調査結果を待たなければならないが、Uberが十分なドライバーの訓練をしていたのかどうか、あるいは、システムに欠陥があった場合などにはその可能性がある。ただし、これまでの判例を見ると、かなり悪質な例でないと刑事責任まで問われることは少ない。

過去に刑事訴追された例を見ると、三菱自動車のリコール隠しのように「欠陥が分かっていたのに隠蔽(いんぺい)していた」というような悪質な場合に限られている。仮に今回のように、システムに不十分な点があって被害者を認識できなかったとしても、「欠陥があると分かっていたのに実験を続行した」というような悪質な場合でなければ、刑事訴追までには至らない可能性が高い。

テストコースでの十分な実証や、万が一に備えてドライバーを乗車させることなど、日本では公道における自動運転車の実験に関して、さまざまなガイドラインが設けられている。(写真=田村 弥)
テストコースでの十分な実証や、万が一に備えてドライバーを乗車させることなど、日本では公道における自動運転車の実験に関して、さまざまなガイドラインが設けられている。(写真=田村 弥)拡大
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