用はないけど、カッコいい?

ジウジアーロによるこのアイデアは、各種インストラクションや警告が機体に直接記されている飛行機からインスピレーションを得ていることは明らかだ。
2005年、デザイナー生活50年を迎えたジウジアーロ本人に「いつかデザインしてみたいものは?」と筆者が質問したとき、彼が「カッチャ・アエーレオ(戦闘機)」と即座に答えたからである。

自動車が飛行機に思いをはせたのは、その黎明(れいめい)期にまでさかのぼる。フランスのヴォワザンは出発点が飛行機メーカーであったことを、自動車を製造するようになってからもセリングポイントとした。そして鳥をアール・デコ調に解釈したマスコットを掲げた。

他にも、飛行機とクルマの両方に携わったメーカーが数々あることは読者諸兄もご存じのとおりである。アメリカで1948年に誕生し、1959年に絶頂を迎えたテールフィンも、飛行機への憧憬(しょうけい)を表したデザインといってよい。

いっぽうで、ジウジアーロはディテールで飛行機を表現した。
飛行機の機体各部に記された文字は、地上隊員もしくはスタッフが、間違いや危険をおかすことなく、メンテナンスするためのものである。いっぽう乗用車は基本的に個人の乗り物であるので、インストラクションを記す必要性は薄い。ましてや、メンテナンスフリー化が進行し、購入から売却まで一度もエンジンルームを開けない人が多い時代である。文字が記されている必要はまったくない。

それでも「なにか文字が記してあると、スタイリッシュ」というのは決して否定できない。日本の100円ショップで販売されている、意味不明なフランス語がプリントされた収納容器も笑えなくなってきた。

イタルデザインの「アズテック」。
イタルデザインの「アズテック」。拡大
「アズテック」の左サイド。
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「アズテック」の右サイド。
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たしかに飛行機の機体には、さまざまな警告やインストラクションが記されている。
たしかに飛行機の機体には、さまざまな警告やインストラクションが記されている。拡大
これも飛行機の機体。
これも飛行機の機体。拡大
こちらも飛行機。
こちらも飛行機。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など数々の著書・訳書あり。

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