中国新ブランドに日本人デザイナーあり

中国メーカーに話を移そう。ここ数年彼らは、高級SUVや電動化車両向けのサブブランドを構築してきた。あまりに多くのブランドが誕生するものだから、2007年に奇瑞汽車が創ったプレミアムカー専用ブランドであるクオロスなどは、気がつけばかなりの先輩格となってしまった。

今回の北京でも、そうした新ブランド創設の流れは続いた。そのひとつ「ORA(オーラ)」は、グレートウォール(長城汽車)がローンチしたシティーEV用ブランドである。会場では「R1」「R2」の2車種が公開された。

デザインを担当したのは、日本人デザイナー、鳥飼啓介氏である。1961年生まれの鳥飼氏は日産自動車にデザイナーとして28年間勤務したのち、日系の内装サプライヤーを経て、2年前に長城が横浜のデザインセンターを立ち上げたのに合わせて移籍した。

上層部からは、「『iPhone』のようなクルマを作れ」と指示があったと振り返る。鳥飼氏は「シンプルで、なんでもない。にもかかわらず、いいものを持っている、豊かな気持ちになる」とiPhoneを評し、それをクルマに反映させることを模索したという。

同時に、「ダイソンの扇風機に代表されるようなモダン家電が、上海・北京に住む80年代・90年代生まれのモダンな若者に受け入れられているのにも注目しました」と語る。そのうえで「エッジの効いたプレスラインをキャラクターラインにするのではなく、塊で表現しました」と説明する。

同時に鳥飼氏は「中国では、日本では不可能だったデザインやパッケージングができる」と話す。 日本では安全基準がネックとなり、車両のオーバーハングをなかなか短くできなかった。しかし長城では、問題をクリアしながら一部のドイツ車をベンチマークにし、タイヤを可能な限り四隅に配置した。

R1、R2の生産開始は2019年。商品企画担当者とともに、ブランドを一から創っていくのも、グレートウォールにおける仕事の醍醐味(だいごみ)であることを語ってくれた。

奇瑞汽車系のプレミアムブランドであるクオロスのコンセプトカー「マイルワン」。5Gネットワーク対応、AIインテリジェント「ミスターQ」搭載など、華々しいスペックが並ぶ。
奇瑞汽車系のプレミアムブランドであるクオロスのコンセプトカー「マイルワン」。5Gネットワーク対応、AIインテリジェント「ミスターQ」搭載など、華々しいスペックが並ぶ。拡大
長城(グレートウォール)のシティーEVブランド「オーラ」。左から「R2」「R1」。
長城(グレートウォール)のシティーEVブランド「オーラ」。左から「R2」「R1」。拡大
車両のプレゼンテーションでは、長城横浜デザインスタジオのデザインダイレクター、鳥飼啓介氏が熱弁をふるった。
車両のプレゼンテーションでは、長城横浜デザインスタジオのデザインダイレクター、鳥飼啓介氏が熱弁をふるった。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。20年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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