異国でのささやかな青春

モバイクの自転車と記念撮影していたら、「空き」と勘違いしたのだろう、若い女性が自転車に近づいてきてボクに問うので、慌てて再びまたがった。

夢の女人街は消えていた。しかしペダルをひとこぎするたび、青果店の前を通れば果物や野菜の香りが、雑貨店をかすめれば屋外でひと息つく店員たちの立ち話が、ボクに降り注いでくる。小学生の頃にテレビで見た、この街の自転車通勤風景と重なり、いっぱしの北京市民になったような気になってきた。

友達と歩きながら、仕事をしながら歌っている人もたびたび見かけた。ボクが住むイタリアに似ていて、これまた面白かった。

以前より改善されたとはいえ、いまだ大気汚染が深刻な中、3M製のフィルター付きマスクを着用している地元の人がいる。その傍らで、「へえー」と驚きながら大口を開けてペダルをこいでいるボクは情報弱者以外の何者でもないかもしれない。

それでもエアコンを効かせるために密閉したクルマでは体験できないことばかりだ。

シェアリング自転車を試してよかった。北京で味わった、ささやかな青春であった。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=藤沢 勝)

こちらは陶器製つぼ入りの、北京ヨーグルト屋台のお兄さん。
こちらは陶器製つぼ入りの、北京ヨーグルト屋台のお兄さん。拡大
2回目に乗ろうとすると、こんな料金チャージ画面が。最低5ユーロ(約650円)は、次回の使用予定が不明な身には、ややハードルが高い。
2回目に乗ろうとすると、こんな料金チャージ画面が。最低5ユーロ(約650円)は、次回の使用予定が不明な身には、ややハードルが高い。拡大
こんな期間プランの案内画面も現れた。
こんな期間プランの案内画面も現れた。拡大
年間で89.9ユーロ(約1万1700円)は、もし北京に住んでいれば、かなり魅力的なオファーかも。
年間で89.9ユーロ(約1万1700円)は、もし北京に住んでいれば、かなり魅力的なオファーかも。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など数々の著書・訳書あり。

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