トヨタ流「ぶつからない技術」

トヨタは2003年にミリ波レーダーで衝突を予測してシートベルトを巻き取り、ブレーキアシストをスタンバイする世界初の「プリクラッシュセーフティシステム」(PCS)を「ハリアー」に搭載。2006年にはミリ波レーダーに加えてステレオカメラと近赤外線照射を用い、ブレーキを作動させて衝突被害を軽減し、さらにステアリングによる回避操舵(そうだ)を支援するシステムを「レクサスLS」に用意するなど、この分野における先駆者を自任していた。しかし、車両を停止させて衝突回避を支援するシステムの商品化においては、ボルボの「シティセーフティ」やスバルの「EyeSight」に遅れをとっていた。

そのハンディを一気に解消するであろう(?)、開発中という2種類の衝突回避支援システムも公開された。まずひとつは、「追突・歩行者事故対応支援PCS」。やはりミリ波レーダーとステレオカメラによって歩行者や車両を認識し、衝突の危険がある場合はドライバーがブレーキを踏めない状況でも自動的にブレーキが作動して衝突回避を支援する。体験試乗では、40km/hで歩行者を模したマネキン人形に向かって走行。近づくと警告を発するが、それでもブレーキを踏まずにいると強制的にブレーキが作動し、かなりの減速Gを伴いマネキンの2mほど手前で停止した。
この「追突・歩行者事故対応支援PCS」、先行する他社のシステムより高い速度(40km/h)からの自動停止が可能なところ、さらに近赤外線投光器を搭載しているため昼夜を問わず性能を発揮できるところが特徴である。

もうひとつはブレーキに加えステアリングまで統合制御する、さらに進化した「走路逸脱対応支援PCS」。走路から逸脱して、対向車両やガードレール、電柱などの障害物と衝突する危険を予知すると、ブレーキによる制動とともにステアリングが自動的に操られて車両の向きを変え、衝突回避に寄与するというものだ。体験試乗は80km/hからノーブレーキでガードレールを模したバリアに向かって進むという設定で行われたが、無事に衝突を回避した。「石橋を叩いて壊す」といわれるほど慎重なトヨタが、万が一作動しなかったら危険な実験をわれわれメディアに体験させたということは、システムの性能、信頼性ともに相当な自信のある証しであろう。
とはいうものの、これら2種の衝突回避システムの商品化の時期についてはノーコメントを貫いていた。「他社が実用化している以上、できるだけ早く出したい」ということではあったが。

交通事故による死亡者のなかでもっとも多いのは歩行者であることは前述したが、そのうちの7割が夜間の事故で亡くなっており、なかでも道路の右から左に横断する際の事故が最多だという。夜間運転におけるドライバーの視界の確保は、事故の多寡に直結する重要な課題なのである。

トヨタは2009年にレクサスLSに先行車のテールランプや対向車のヘッドランプを車載カメラで検出し、ヘッドライトのハイ/ロービームを自動で切り替える「オートマチックハイビーム(AHB)」を導入している。
今回公開された「アダプティブドライビングビーム(ADB)」は、それをさらに進化させた技術で、ハイビームを部分的に遮光することによって照射領域を変化させ、先行車や対向車を幻惑せずに路肩にいる歩行者や障害物を照射する。常にハイビームに近い視界を確保し、夜間の視認性を向上する画期的な照明システムといえるが、これも商品化については未定とのことだった。

「レクサスLS」による「追突・歩行者事故対応支援PCS」の体験試乗。40km/hで走行中に衝突の危険を判断してブレーキが作動し、マネキンの手前で停止した状態。
「レクサスLS」による「追突・歩行者事故対応支援PCS」の体験試乗。40km/hで走行中に衝突の危険を判断してブレーキが作動し、マネキンの手前で停止した状態。 拡大
停止状態で車内からマネキンを見た図。間近に迫って見える。
停止状態で車内からマネキンを見た図。間近に迫って見える。 拡大
「走路逸脱対応支援PCS」の体験試乗で、「トヨタ・クラウン」がバリアにノーブレーキで向かっていくところ。この後システムが作動して減速と操舵(そうだ)を行い、バリアの手前で停止した。なお、切り込もうとするステアリングにドライバーがあらがえば、ドライバーのほうが優先されるという。「あくまで支援システムであり、自動運転ではない」というのがその理由である。
(写真=トヨタ自動車)
「走路逸脱対応支援PCS」の体験試乗で、「トヨタ・クラウン」がバリアにノーブレーキで向かっていくところ。この後システムが作動して減速と操舵(そうだ)を行い、バリアの手前で停止した。なお、切り込もうとするステアリングにドライバーがあらがえば、ドライバーのほうが優先されるという。「あくまで支援システムであり、自動運転ではない」というのがその理由である。
(写真=トヨタ自動車) 拡大
「アダプティブドライビングビーム(ADB)」の実験より。写真上はロービームを点灯した状態で、左右の路肩にいる歩行者を模した人形はほとんど見えない。写真下はハイビームで「ADB」を作動させた状態。先行車や対向車を照射する部分は遮光されているため、それらを幻惑することはない。にもかかわらず路肩の人形には光が届いており、認識することができる。
「アダプティブドライビングビーム(ADB)」の実験より。写真上はロービームを点灯した状態で、左右の路肩にいる歩行者を模した人形はほとんど見えない。写真下はハイビームで「ADB」を作動させた状態。先行車や対向車を照射する部分は遮光されているため、それらを幻惑することはない。にもかかわらず路肩の人形には光が届いており、認識することができる。 拡大
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