接近戦とトラブルに打ち勝て

レースを面白くする優遇措置に賛同したとはいえ、なかなか厳しい状況を招いてしまったと言える。トヨタTS050ハイブリッドは、300kWのモーターアシストを生かしてシケインやコーナーの立ち上がりでプライベーターを置き去りにする特性だ。しかし、長いストレートではプラス200psのパワーを生かしたプライベーターが追い上げ、終盤でトヨタに追いつくか、あるいは追い越すことが予想できる。

高速区間ではぎりぎり、トヨタに分があるようだ。一方、コーナーが連続するポルシェカーブでは、あり余るパワーを背景にダウンフォースを重視したプライベーターがトヨタを上回る速さを見せつける。

つまり、2台のトヨタは8台のプライベーターを相手にコースのいたるところで接近戦を演じることが予想される。リベリオン1号車はアウディで優勝経験のあるA.ロッテラーやポルシェで優勝経験のあるN.ジャニがドライブしているし、SMPレーシングの11号車は元F1ドライバーのV.ペトロフやJ.バトンがドライブする(バトンはルマン初挑戦だが)。接近戦ともなれば、ひと筋縄ではいかないだろう。

厳しい戦いが予想されるうえに、不安材料もある。2016年は残り5分までゆうゆうとレースをリードしておきながら予期せぬトラブルが発生してリタイアした。中嶋一貴が「ノーパワー」と叫んだ無線は、今でも耳にこびりついている。「やり残しはないか」を合言葉に臨んだ2017年は、不測の事態が相次いで3台のマシンをレース中盤に失った。

2018年のルマンに向けては予期せぬトラブルが発生しても対処できるようトレーニングを積んだという。エンジニアやメカニックには黙って制御ソフトにエラーを仕込んでおき、トラブルを発生させて対処させたり、わざと3輪走行にして1周を無事に帰ってこられるか試してみたりした。速さや信頼性を磨くだけでなく、トラブルへの対処を鍛えた。

しかし、どんなにトラブルを想定してトレーニングしてもしょせんは訓練である。事前に予測できないから予期せぬトラブルなのだ。未知のトラブルに遭遇したとき、今度こそうまく乗り切れるだろうか。

なんだ、散々心配して損しちゃったなぁ、という結果を実は期待している。

(文=世良耕太/写真=トヨタ自動車/編集=関 顕也)

スパで優勝を喜ぶ、トヨタ8号車のドライバー(写真左からS.ブエミ、中嶋一貴、F.アロンソ)。ルマンでも、この笑顔が見られるか?
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