MT車とともに失われる伝統の機構

実は新型フォレスターには、もうひとつ失われてしまうものがある。それが機械式AWDと6段MTを組み合わせたシンプルかつメカニカルなスバル伝統のパワートレインだ。既にターボ+5段MTという仕様は、3代目の「XT」を最後にラインナップから消えていたが、4代目では自然吸気仕様に6段MT車を用意していた。現在、スバルのAWDはAT車では電子制御式が基本で、「WRX STI」の高性能AWDも電子制御LSDを搭載したものに進化している。つまり、スバルのスタンダードなビスカスLSD付きセンターデフ方式のAWD車は、フォレスターのMT車を残すのみとなっていたのだ。以前に1度だけこの仕様に乗ったことがあるが、適度なパワーのエンジンをMTを駆使して操る楽しさと自然なフィーリングのAWDによる走りが好印象だった。

フォレスターからMTが消えたことで、日本からシンプルなビスカスLSD付きセンターデフ式AWDを持つスバル車が消滅する。「日本から」というのは、北米など海外市場にはインプレッサやXVのMT車が存在するからだ。こちらには継続してこのAWDが搭載される。XVのMT仕様とは、スバルファンにとっては実にうらやましいモデルといえるが、すべては市場の声によるもの。実際、市場全体の販売台数が多いだけでなく、MT車の比率も日本より高いという。

ターボの爽快な加速と、SUVであることを忘れさせてくれる走りの良さは、フォレスターの大きな魅力であったことは間違いない。しかし、新型では悪路走破性を高める「X-MODE」の性能を強化するなど、クルマとしての機能が格段に高められており、今回の決断はフォレスターがもう一段階の成長を目指した結果ともいえる。新型がわれわれに、失われた魅力を超える驚きと感動をもたらしてくれることを期待するばかりだ。

(文=大音安弘/写真=スバル/編集=藤沢 勝)

新型「フォレスター」にはMT仕様が用意されないため、機械式AWD機構を備えたスバル車は、日本での販売が終了することとなる。(写真はイメージ)
新型「フォレスター」にはMT仕様が用意されないため、機械式AWD機構を備えたスバル車は、日本での販売が終了することとなる。(写真はイメージ)拡大
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