「あったら便利」じゃ続かない

将来自動運転技術の普及が進めば、つながる機能は“あれば便利な機能”から“必須の機能”に変わる。自動運転車の場合、交通状況を考慮した最適なルート選択にも、自動運転ソフトウエアの更新にも、そして自動運転タクシーを呼び出すにも通信機能は不可欠だからだ。トヨタが今回発売したカローラ スポーツとクラウンを「初代コネクティッドカー」と呼ぶのは、両車種がトヨタとして初めて、最初から「DCM」と呼ぶ通信モジュールを標準搭載する車種だからである。その背景には、ここまで説明してきたように、将来のクルマでは“つながる”ことが当たり前の機能になることが背景にある。

もっとも、今回のトヨタの発表を見ると、鳴り物入りで登場した割に、搭載機能はインパクト不足の感が否めない(添付イメージ参照)。車両データからオペレーターが車両の状態を診断する「eケア走行アドバイス」や「eケアヘルスチェックレポート」は、完成車メーカーが以前から導入したがっていた機能で、系列の販売店での点検や修理を促す「切り札」と位置づけていたものだが、ユーザーから見れば「サービスの押し売り」に見えなくもない。

唯一、キラーアプリケーションになり得るのが「AI音声エージェント」だ。これは人工知能(AI)のバーチャルエージェントがユーザーの自然発話を聞き取り、ナビの目的地設定やオーディオの操作、機器の取り扱い説明などを行うもの。「このへんにあるそば屋を探して。駐車場のあるところがいい」など、あいまいな指示でも理解できるという。ただこうした機能は米アマゾン・ドット・コムや米グーグルといったIT大手が得意とする分野で、トヨタがどこまで強みを発揮できるかは未知数だ。

トヨタのコネクテッドカーは最初の車検までは通信料は無料だが、4年目以降はクラウンが1万6000円+税=1万7280円、カローラ スポーツが1万2000円+税=1万2960円の通信料がかかる(いずれも1年あたり)。「つながるクルマ戦略」が成功するかどうかは、つながる機能が「あれば便利」程度ではなく「なくてはならない」とユーザーに思わせられるかどうかにかかっている。さもなければ、ユーザーは通信料を払ってくれず、DCMは宝の持ち腐れになる恐れがある。

(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)

トヨタのコネクティッドサービスのイメージ。DCM車載器を介して車両およびドライバー側の状況を判断、必要とされる情報をオペレーターやAIなどが提供する。
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