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ハスクバーナ・ヴィットピレン401(MR/6MT)

カッコつけるのも楽じゃない 2018.07.24 試乗記 伊丹 孝裕 スウェーデンのバイクブランド、ハスクバーナから、待望のロードモデル「ヴィットピレン401」がデビュー。他のどんなバイクにも似ていない北欧の“白い矢(VITPILEN)”は、欠点を探すのが難しいほどに完成度の高い一台に仕上がっていた。

スタイリングはショーカーそのもの

「むかしむかし、あるところにスウェーデンの王様が……」という社史は以前のコラムをご参照いただきたいが、一時は存続の危機があったとは思えないほど、ハスクバーナが絶好調だ。とりわけ2018年に入ってからの躍進は目覚ましく、その一翼を担っているのがこのヴィットピレン401である。

ヴィットピレン401は2014年にプロトタイプが初披露され、その後は毎年「出るぞ」「出すぞ」といわれながら年月が経過。ところがその裏では着々と開発が進められていたらしく、先頃ついにデリバリーが開始された。

印象的なのはやはりそのスタイリングだ。バイクでもクルマでも量産モデルになれば「ショーモデルはあんなにカッコよかったのに」と軽く落胆するのが常ながら、ハスクバーナにそれはあてはまらない。「もしかしたら途中で面倒くさくなったんだろうか?」と思うほど、ほぼプロトタイプのままで登場したからだ。

何にも似ていないためスケール感が伝わりづらいが、車格は一般的な250ccと同等か、それ以下にすぎない。クロームモリブデン鋼のトレリスフレームに懸架されるエンジンは軽量コンパクトな375ccの水冷単気筒ゆえ、車体はスリムそのもの。燃料なしの半乾燥状態での車重は148kgしかなく、取り回しで緊張感を強いられることはないはずだ。

北欧はスウェーデンのバイクブランドであり、現在はKTMの傘下にあるハスクバーナ。二輪の生産開始は1903年と、100年を超える歴史を持つ老舗である。
北欧はスウェーデンのバイクブランドであり、現在はKTMの傘下にあるハスクバーナ。二輪の生産開始は1903年と、100年を超える歴史を持つ老舗である。拡大
バイク全体のユニークなフォルムに加え、シートと一体となったカウル、ハイコントラストな色使いにイエローの差し色など、「ヴィットピレン401」は2014年に発表されたコンセプトモデルそのままのイメージで登場した。
バイク全体のユニークなフォルムに加え、シートと一体となったカウル、ハイコントラストな色使いにイエローの差し色など、「ヴィットピレン401」は2014年に発表されたコンセプトモデルそのままのイメージで登場した。拡大
コンセプトモデルの発表から3年、2017年のEICMA(ミラノショー)で満を持して発表された「ヴィットピレン401」。日本では2018年4月に販売が開始された。
コンセプトモデルの発表から3年、2017年のEICMA(ミラノショー)で満を持して発表された「ヴィットピレン401」。日本では2018年4月に販売が開始された。拡大

エンジンがいい、シャシーもいい

ただし、いざまたがろうとするとちょっとした壁がある。なぜなら835mmのシート高はこのクラスとしては高く、そこにロー&ワイドなセパレートハンドルが組み合わせられるために前傾姿勢は生ぬるくない……というか修行レベルだ。上体を支えるための筋量の有無はある程度試されるが、それさえクリアできればヴィットピレン401は極めて良質なライトウェイトスポーツになってくれる。

エンジンをスタートさせると、トガッたスタイリングとは裏腹に排気音はマイルドだ。フライホイールマスは軽い部類ながらも十分なトルクを発生し、クラッチのつながりも穏やかそのもの。極低速走行を強いられる場面でもストレスはまったくない。

ストレスフリーなのは高速巡航に移行しても同様だ。エンジンにはバランサーシャフトが組み込まれているおかげで振動は少なく、単気筒特有の、もしくは中排気量車特有の高回転域の苦しさもない。コロコロと心地いい鼓動感をともなったまま、レブリミッターが作動するまで爽快に回し切ることができる。9000rpmで発生する44psの最高出力にまったく不足はなく、スロットルを開ければ優れたピックアップとともに欲しいキック力を引き出すことが可能だ。

足まわりとハンドリングもいい。フロントフォークにアジャスターは備わらず、リアサスペンションもリンクレスだが路面追従性は高く、十分なストローク量を確保。高いスタビリティーを見せるフロントに対し、リアには“軽やかセットアップ”が施され、コーナリング中のラインの自由度は高い。このクラスには珍しい対向4ピストンブレーキキャリパーの採用が制動力やコントロール性に余力をもたらしている。

ボディー骨格にはパウダーコートを施したクロームモリブデン鋼のトレリスフレームを採用。250ccクラス並みの軽量コンパクトな車体と中排気量エンジンの組み合わせにより、シーンを選ばずストレスフリーな走りを実現している。
ボディー骨格にはパウダーコートを施したクロームモリブデン鋼のトレリスフレームを採用。250ccクラス並みの軽量コンパクトな車体と中排気量エンジンの組み合わせにより、シーンを選ばずストレスフリーな走りを実現している。拡大
不快な振動の少なさと心地のよいビート感、太いトルク、スムーズな吹け上がりと、さまざまな美点を併せ持つ375ccの水冷4ストローク単気筒エンジン。44psの最高出力と37Nmの最大トルクを発生する。
不快な振動の少なさと心地のよいビート感、太いトルク、スムーズな吹け上がりと、さまざまな美点を併せ持つ375ccの水冷4ストローク単気筒エンジン。44psの最高出力と37Nmの最大トルクを発生する。拡大
サスペンションは、前がφ43mmのWP製倒立フォーク、後ろが同じくWP製のモノショックの組み合わせ。タイヤサイズは前が110/70R17 M/C 54H、後ろが150/60R17 M/C 66Hで、メッツラーの「スポルテックM5インタラクト」が装着されていた。
サスペンションは、前がφ43mmのWP製倒立フォーク、後ろが同じくWP製のモノショックの組み合わせ。タイヤサイズは前が110/70R17 M/C 54H、後ろが150/60R17 M/C 66Hで、メッツラーの「スポルテックM5インタラクト」が装着されていた。拡大
シート高は835mmとかなり高め。低い位置にグリップが突き出たセパレートハンドルとも相まって、ライディング時には非常に前のめりな姿勢を強いられる。
シート高は835mmとかなり高め。低い位置にグリップが突き出たセパレートハンドルとも相まって、ライディング時には非常に前のめりな姿勢を強いられる。拡大
メーターはモノクロのデジタル式。走行モードの切り替え機構などはなく、総じて電装関連は非常にシンプルといえる。
メーターはモノクロのデジタル式。走行モードの切り替え機構などはなく、総じて電装関連は非常にシンプルといえる。拡大
現在におけるハスクバーナのロードモデルのラインナップは3種類。今回試乗した「ヴィットピレン401」の他に、700ccクラスのエンジンを搭載した「ヴィットピレン701」、スクランブラースタイルの「スヴァルトピレン401」が用意されている。
現在におけるハスクバーナのロードモデルのラインナップは3種類。今回試乗した「ヴィットピレン401」の他に、700ccクラスのエンジンを搭載した「ヴィットピレン701」、スクランブラースタイルの「スヴァルトピレン401」が用意されている。拡大

そんなアナタにスヴァルトピレン

あれもいい、これも十分、それも問題なし……と書き続けるのもなんなので前傾姿勢のキツさ以外にネガティブはないのだろうか? そう思ってあれこれ探しているとひとつあった。

タコメーターが7000rpmを超えるとメーター上部でインジケーターが赤く点滅して警告を発するのだ。実はこれがちょっと煩わしい。レブリミッターは1万1000rpmで作動し、最高出力は9000rpmなのだから、そんなに低い回転域からなだめてくれる必要はない。ささいといえばささいであり、ほとんど言い掛かりに近いが集中力をスポイルする部分である。

ちなみに、ヴィットピレン401の前傾姿勢問題には根本的な打開策が用意されており、同時にラインナップされた「スヴァルトピレン401」を選べば一発解決だ。スクランブラースタイルのそれには安楽なアップハンドルが標準装備され、それでいてヘビーデューティーな機能パーツが盛り込まれているため軟弱さはない。これはこれでスタイリッシュにまとめられているため、見た目だけで選んでも後悔はないはずだ。

ハスクバーナの躍進はまだまだ続きそうな気配である。

(文=伊丹孝裕/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)

 
ハスクバーナ・ヴィットピレン401(MR/6MT)【レビュー】の画像拡大
 
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【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1357mm
シート高:835mm
重量:148kg(乾燥重量)
エンジン:375cc 水冷4ストローク単気筒 DOHC 4バルブ
最高出力:44ps(32kW)/9000rpm
最大トルク:37Nm(3.8kgm)/7000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:77万7000円

伊丹 孝裕

伊丹 孝裕

モーターサイクルジャーナリスト。二輪専門誌の編集長を務めた後、フリーランスとして独立。マン島TTレースや鈴鹿8時間耐久レース、パイクスピークヒルクライムなど、世界各地の名だたるレースやモータスポーツに参戦。その経験を生かしたバイクの批評を得意とする。

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