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【スペック】全長×全幅×全高=4380×1850×1230mm/ホイールベース=2575mm/車重=1440kg/駆動方式=MR/3.5リッターV6DOHC24バルブスーパーチャージャー付き(350ps/7000rpm、40.8kgm/4500rpm)/価格=1062万5000円(テスト車=1165万5000円/プレミアムパック<レザー>=45万円/ライフスタイルペイント<グラファイトグレー>=22万円/グロスアンスラサイト鍛造アルミホイール=36万円)

ロータス・エヴォーラS(MR/6MT)【試乗記】

ロータス純度高まる 2011.07.19 試乗記 竹下 元太郎 ロータス・エヴォーラS(MR/6MT)
……1165万5000円

「ロータス・エヴォーラ」シリーズに加わった、ハイパフォーマンスモデル「エヴォーラS」。ワインディングで、その走りを試した。

350psのスーパーエヴォーラ

外から見るかぎり、ノーマル「エヴォーラ」と「エヴォーラS」を見分けるのは簡単ではない。フロントはほとんど同じ。あえていうなら、ドアミラーがボディ同色ではなく、黒くなっているくらいの差でしかない。しかしリアに回れば、違いがはっきりする。ボディの下部には迫力のあるディフューザーがのぞいており、テールパイプが2本ではなく、大径の1本出しになっているからだ。なるほど、追い抜かれて初めて「S」だったのか、とわかるわけだ。

「エヴォーラS」最大の見どころは、キャビン直後に横置きされたエンジンである。3.5リッターのトヨタ製V6ユニットには、スーパーチャージャーが装着されて、実に350psと40.8kgmにまでチューンされているのだ。エンジンフードを開けて、「LOTUS PERFORMANCE」と記されたエンジンカバーを外してみると、エンジンの直上にドンッと大きなスーパーチャージャーが現れた。

じっくり見回すと、「HARROP」という聞き慣れないブランド名が刻印されていた。調べたところ、これはオーストラリアのパーツメーカーのようだ。さらに調べてみたら、コンポーネント自体はスーパーチャージャーのメーカーとしては有名な米イートン社のものであることがわかった。思えば、イートン製を使うイギリス系メーカーは多い。先代のミニや、ジャガーなんかもそうだった。ということは、「ミャー」と盛大に鳴くのか(最近はそういうにぎやかなのは減ったけど)、なんて考えてみる。
とまあ、そんな感じでじっくりいろいろ見回してから、おもむろにドアを開け、運転席に着いた。その瞬間、「あっ、これはロータスだ」とピピッときた。

ロックを解除してエンジンカバーを外すと……
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ルーツ式のスーパーチャージャーが現れた。イートンのコンポーネンツを使った、豪ハロップ社の「HTV1320」という製品である。
ルーツ式のスーパーチャージャーが現れた。イートンのコンポーネンツを使った、豪ハロップ社の「HTV1320」という製品である。 拡大
ディフューザーとシングルテールパイプが「S」の証し。
ディフューザーとシングルテールパイプが「S」の証し。 拡大
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いいオトナをその気にさせる

ドライビングシューズを履いてきてホント良かった。太いサイドシルのせいでABCペダルが全体的に左に寄せられて配置されているうえに、3つのペダルが互いに近い配置になっているので、幅広のナイキなんか履いてきたら試乗などまともにできないところだった。
そして、思いのほかペダルまでの距離が遠く、ダッシュボード下に潜り込むようなポジションになるのが、いかにもロータスというか英国のスポーツカーだ。ちょっと前に試乗した「ロータス・ヨーロッパ スペシャル」(1970年代のオリジナルのほう)もそうだったが、ペダルまでの距離が思いのほか深い。もっとも、エヴォーラはオリジナルのヨーロッパほど寝そべった姿勢にはならないけれども。

以上はロータスに対する不満ではない。褒め言葉である。だって良くも悪くもこの時代、ドライビングシューズを履いて乗ろうなんて気にさせるスポーツカーは、ロータスぐらいしかないのだから。ポルシェもフェラーリも、もう別のところに行ってしまった。そういう意味で、ロータスは貴重な存在である。

エンジンは荒々しいものを想像していたが、実際はだいぶ違った。もちろん映画『プリティ・ウーマン』のワンシーンみたいに(あれは「エスプリ」だったが)スロットルペダルを乱暴に踏み込んだら、とんでもない加速をする。日本ではほんの一端しか試すことはできないが、資料によれば、最後まで見届けるとメーターの針は277km/hに達するそうである。一方で、0-100km/h加速は4.8秒。これは「ポルシェ911カレラ」や「アウディR8 4.2」あたりに近い加速性能だ。
そうではなく、このエンジンの日常的な表情の話をするなら、とても静かで、スムーズで、ジェントルである。

テスト車は、オプションの「プレミアムパック(レザー)」装着車で、センターコンソールやドアパネル、アームレストなどがレザートリムとなる。トリムカラーは、テスト車のオイスターのほか、チャコール、パプリカ、ココボロが用意される。
テスト車は、オプションの「プレミアムパック(レザー)」装着車で、センターコンソールやドアパネル、アームレストなどがレザートリムとなる。トリムカラーは、テスト車のオイスターのほか、チャコール、パプリカ、ココボロが用意される。 拡大
プラス2レイアウトのおかげで、室内はミドシップカーらしからぬ広さを誇る。レカロ製レザーシートは標準色がブラックで(テスト車はオプションのオイスター)、リクライニングが可能。さらに「プレミアムパック」に含まれるシートヒーターも備わる。
プラス2レイアウトのおかげで、室内はミドシップカーらしからぬ広さを誇る。レカロ製レザーシートは標準色がブラックで(テスト車はオプションのオイスター)、リクライニングが可能。さらに「プレミアムパック」に含まれるシートヒーターも備わる。 拡大
足元には、オプションのグロスアンスラサイト鍛造アルミホイールが装着されていた。タイヤサイズは前が225/40ZR18、後ろは255/35R19。
足元には、オプションのグロスアンスラサイト鍛造アルミホイールが装着されていた。タイヤサイズは前が225/40ZR18、後ろは255/35R19。 拡大
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軽さは万物に効く

トルクのピークは4500rpmとなっているが、1000rpm台の後半でかなりの割合のトルクがわき出ているように思う。たとえば4速で40km/hだと1500rpmにちょっと欠ける回転数でしかないが、3速に落とす必要なんてまったくない。スロットルを丁寧に踏み込むと、スーパーチャージャー特有の分厚い加速が始まる。もちろんイートンは「ミャー」なんて鳴かない。「ファーン」と乾いたハスキーサウンドがキャビンの後方からうっすらと響いてくるにすぎない。

このいつなんどきでもトルクの山に居座っていられるようなこのエンジンは、ワインディングロードでもとても有効な武器になる。操舵(そうだ)とともにノーズがピッと内側を向いたら(このシャープなハンドリングは本当に痛快だ)、強力な横Gに耐えながら旋回して、コーナーからの脱出で、一気にトルクを路面にたたきつけることができる。回して乗る自然吸気ユニットのように、トルクバンドから外れないよう気を配る必要はない。

そして加速の逆、ブレーキングも見事である。アウディR8にしろポルシェ911にしろ、このクラスのスポーツカーはだいたい車重が1.6トンクラスだが、エヴォーラSはそれより大幅に軽い1440kgしかない。とにかくスッと見事に止まる。そして絶対的な制動性能もさることながら、ドライバーがブレーキペダルを抜いたり、逆に踏み増したりするニュアンスをとても忠実に反映してくれる。ああ、ブレーキングにもクオリティというものがあるのだなあと痛感させられる瞬間だ。軽いボディと締まった足まわりのおかげで、山道におけるヨーダンピングも素晴らしい。

パワーアップしたスポーツカーの中には、残念ながら「直線番長」になってしまうものもある。けれど、エヴォーラにとってさらなる力は悪玉コレステロールにはなっていない。もっとロータスになるための350psであった。

(文=竹下元太郎/写真=荒川正幸)



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2+2の後席。シートレイアウトは2+2のほか、2シーターも用意され、そちらは42万円安の設定。
2+2の後席。シートレイアウトは2+2のほか、2シーターも用意され、そちらは42万円安の設定。
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エンジンの後ろには160リッターの荷室が備わる。
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