記録更新して高度は7620メートルに

裏切ったり出し抜いたりということが重なり、物語は二転三転する。複雑にしすぎていて爽快な展開が楽しめないのはちょっと残念な気もするが、大事なのはアクションシーンだ。今年56歳になったトム・クルーズは、またしてもスタントマンにまかせきりにせず自分で多くのシーンを演じている。

ビルの谷間やノルウェーの断崖絶壁でジャンプする場面が何度もあり、彼は合計106回も飛び降りたという。ついには壁に激突して右足を骨折するというアクシデントに見舞われる。医者は完治するまで9カ月かかると診断したが、リハビリに励んで6週間後には撮影を再開したというから驚く。指の骨はすべて折ったことがあるジャッキー・チェンを見ればわかるとおり、骨折はアクション俳優にとって勲章のようなものだ。

2011年の『ゴースト・プロトコル』では、ドバイのブルジュ・ハリファで地上828メートルのガラス窓に張り付いた。2015年の『ローグ・ネイション』では、軍用輸送機の「A400Mアトラス」のドアにしがみついて飛行。高度はほぼ倍増して1524メートルに達した。今回はその記録を超えることが求められる。アクションが行われる高度で映画の価値が決まるとは思えないが、数字が下がるとトーンダウンしたように受け止められてしまうのは仕方がない。

ということで、最高到達点は7620メートルまでエスカレート。「ボーイングC-17グローブマスターIII」から飛び降りるシーンがある。富士山の2倍以上の高度だから、低酸素症の恐れがある。特殊な酸素マスクを特注して撮影に臨んだというが、これは軍の精鋭部隊が敵地に潜入するためのパラシュート降下である。1日10回以上の訓練を4週間にわたって行い、本番を迎えたという。250km/h以上のスピードで飛ぶC-17から飛び出すという危険なスタントだ。

(C) 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.
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第176回:旧型のM5でパリの凱旋門を駆けぬける歓び『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』の画像拡大
 
第176回:旧型のM5でパリの凱旋門を駆けぬける歓び『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』の画像拡大
 
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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