ビュイックは貧乏暮らしの象徴?

クレイグはマーロと違って裕福な暮らしを送っている。援助してくれるのはありがたいが、関係は微妙だ。マーロの夫ドリュー(ロン・リヴィングストン)は、ディナーに招待されてもあまり乗り気ではない。「どうせメルセデスの新車を見せたいだけだろ……」とひがみ根性全開だ。しがないサラリーマンという引け目を感じていて、階層の違うクレイグとはしっくりいかない。

「スバル・アウトバック」に乗って4人でクレイグ宅を訪れる。クルマ2台持ちではあるのだが、どちらも中古の日本車というのが寂しいところ。玄関前にはマットブラックの「メルセデス・ベンツGクラス」が鎮座していた。ドリューは「Gワゴンか。ジャスティン・ビーバーと同じだ」などと言っていて、やはり成り上がり系金持ちだと思っているのだろう。実際、Gクラスに乗っている有名人にはブラッド・ピット、パリス・ヒルトン、マライア・キャリーなどがいて、確かにセレブ感バリバリの面々だ。

クレイグの邸宅は上質なインテリアで飾られていて、生活感があふれているマーロの家とは好対照。東洋系の妻がセンスよく家庭内を仕切っているようだ。ディナーを始めるとSiriを使って感じのいい音楽をかけ、子供たちには別メニューでトリュフ入りのパスタを振る舞う。サラとジョナは目を丸くしている。2つの家庭では、カルチャーがまったく違うのだ。

クレイグも自分の成功がマーロとドリューのプレッシャーになっていることは自覚しているから、「俺も昔はビュイックに乗っていた」などと話す。貧乏暮らしだったこともあると言いたいのだろうが、素直に受け取れないのが人情だ。だから、出産祝いとして夜だけのベビーシッターを雇うことを提案されても断ってしまう。

(c) 2017 TULLY PRODUCTIONS.LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
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第177回:あの美女が中古フィットに乗る中年女を演ずる『タリーと私の秘密の時間』の画像拡大
 
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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