独特の美学が心地よい
運営チームに連絡を入れようとしていると、1台のワンボックスがDB4の前に停車した。僕たちの最後尾で“追い上げ役”を兼ねて帯同している、ヘリテージ部門のメカニックたちだ。症状を伝えると「なるほどね」といいながらエンジンフードを開き、ブレーキのラインをチェックする。DB4はダンロップ製の4輪ディスクブレーキを備えたモデルだが、ロッキード製のバキュームサーボが付いていて、そこにチャッチャと手を入れる。「ここにトラブルが出ることがあるんだ」と言いながら、ものの10分たらずで「クルマに乗ってエンジンかけて、ゆっくりクラッチつないでみて」。……直ってる。フィールは少し変わったけど、作動は正常だ。
アストンマーティンはかつての名車たちをいい状態で動態保存していることで知られているけれど、それはこういう男たちによって支えられているのだ。そういえば出発前に確認する時間がなかったから、ここで尋ねてみる。「このエンジンはどこまで回していいの?」「好きなだけ(笑)。気持ちいいと思える範囲は分かるだろ? 調子はみてあるから。壊れたら直すし。壊れないけど」。こういうところも、英国の自動車文化の奥深さなのかもしれない。
実際のところ、その後のDB4は快調だった。他のクルマたちから遅れた分を取り戻すため──という言い訳のもと、3.7リッター直6にムチを入れたわけだけど、その加速は軽快というより野太い力強さで、“たかが”243psなのに想像以上に速く、意外や簡単にコンボイに追いついた。芯のしっかりした雄々しいフィールも、夢見心地にさせてくれる荒々しくも甘いサウンドも、はっきりと快い。デビュー当時にしても最速マシンというわけではなかったけれど、見晴らしの利く場所でどこか遠くを見つめているような、独特の美学に満ちた世界観の心地よさに、知らず知らずに引き込まれていく。
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