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MINIクーパーS コンバーチブル(FF/7AT)

あのヤンチャさが懐かしい 2018.08.25 試乗記 鶴原 吉郎 トランスミッションが変更されるなど、大規模なマイナーチェンジを受けたMINIに試乗。今回のテスト車は4シーターオープンの「クーパーS コンバーチブル」。風を感じながらのドライブで、最新モデルの出来栄えをチェックした。

7段DCTを新搭載

日本市場では貴重な存在、というよりもオープン4座コンパクトカーとして唯一の選択肢が「MINIコンバーチブル」だ。2001年にBMW傘下のブランドとしてMINIが再出発してから、現在販売されているモデルは3世代目に当たる。第3世代のモデルは、BMWブランドの「2シリーズ アクティブツアラー」や「同グランツアラー」「X1」などのモデルが使っている前輪駆動を基本としたコンパクトクラス車向けプラットフォーム「ULK2」の1クラス下となる「ULK1」プラットフォームを採用したのが特徴だ。当然、搭載エンジンや変速機もBMWモデルと共有する。

今回試乗した第3世代のMINIコンバーチブルは国内市場では2016年に登場したのだが、2018年5月に、「3ドア」「5ドア」とともに部分改良を受けた。外観や内装にも変更点はあるのだが、最も大きな変更は従来の6段自動変速機(6段AT)に代えて、7段DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を採用していることだ。最近のATはだいぶ改良されているとはいえ、DCTのほうがアクセル操作に対してエンジンが応答する「ダイレクト感」ではまだ勝っている部分があり、BMWはそこを重視したのだろう。

実はこの6段ATから7段DCTへの換装は、MINIだけでなく、ULK2プラットフォームを採用する2シリーズ アクティブツアラーやグランツアラー、さらにはX1でもほぼ同時期に実施されている。一方でボルボのようにDCTをATに置き換えるメーカーもあり、BMWの今回の変更は、メーカー間の判断の違いを示すもので興味深い。

「3ドア」「5ドア」とともにマイナーチェンジを受けた「MINIコンバーチブル」。トランスミッションが変更されたほか、内外装デザインの見直しも行われた。
「3ドア」「5ドア」とともにマイナーチェンジを受けた「MINIコンバーチブル」。トランスミッションが変更されたほか、内外装デザインの見直しも行われた。拡大
インテリアでは、助手席正面のパネルにユニオンジャック模様があしらわれている。
インテリアでは、助手席正面のパネルにユニオンジャック模様があしらわれている。拡大
トランスミッションは従来のトルコン式6段ATに代えて、新たに7段DCTを採用。シフトセレクターも新デザインとされた。
トランスミッションは従来のトルコン式6段ATに代えて、新たに7段DCTを採用。シフトセレクターも新デザインとされた。拡大
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ここにもそこにもユニオンジャック

今回試乗したMINIコンバーチブルは高出力モデルのクーパーSで、2リッター直列4気筒のターボエンジンを積み、最高出力は192ps/5000rpm、1350-4600rpmの範囲にわたって280Nmの最大トルクを発生する。ベース車の価格は425万円だが、試乗車は「MINI YOURSスタイル」と呼ばれるオプションパッケージなどを装備しており、その価格は500万円を超えるから、お値段のほうはとても「ミニ」ではない。

新型MINIコンバーチブルはテールランプの意匠が英国旗の「ユニオンジャック」をモチーフとしたデザインに変更されたのが大きな特徴で、よく見ると、本物の英国旗と同様に、微妙に左右非対称のデザインになっている芸の細かさだ。MINI YOURSスタイルを装備すると、これに加えてソフトトップのルーフやインパネのトリム、ステアリングホイール、エンブレムなどにもユニオンジャックがあしらわれる。MINIがBMWの1ブランドになって20年近くがたつが、であるからこそ「Made in UK」を強調する必要があるのかも、というのは邪推だろうか。

ソフトトップを飾る大きなユニオンジャックは、パッケージオプション「MINI YOURSスタイル」に含まれている。
ソフトトップを飾る大きなユニオンジャックは、パッケージオプション「MINI YOURSスタイル」に含まれている。拡大
リアコンビランプにもユニオンジャックが配される。左右合わせてひとつの“旗”に見えるようになっている。
リアコンビランプにもユニオンジャックが配される。左右合わせてひとつの“旗”に見えるようになっている。拡大
フロントフェンダーの後ろに装着された「MINI YOURS」のバッジ。
フロントフェンダーの後ろに装着された「MINI YOURS」のバッジ。拡大

意外と使えるユーティリティー

「ミニ」と呼ぶにはいささか大きく成長した第3世代のMINIだが、それでも今回試乗したコンバーチブル クーパーSの全長は3860mmと「コンパクト」の領域には十分収まっている。それでいて、後席には余裕たっぷりとはいえないまでも大人2人のための実用的なスペースが確保されている。ラゲッジスペースはミニマムではあるのだが、最大限に活用できるように工夫がこらされている。

荷室容量自体は、ソフトトップを収容した状態では160リッターにとどまるが、ソフトトップを閉じた状態では、ソフトトップを収容していたスペースのぶん広くなって215リッターになる。さらに、ソフトトップを開いた状態ではMINIの伝統に従ってトランクリッドが下方に開くだけなのに対して、ソフトトップを閉じると、上方にも開口部が広がる。拡大したぶんのスペースを活用しやすいように、荷室とソフトトップの収納スペースの間の「仕切り」は、上にずらして荷室を拡大できるようになっている。これでも足りなければ、後席のシートバックを前に倒せば、多少長めの荷物を飲み込むこともできる。

ソフトトップは、これもMINIの伝統なのだが、フルオープンのモードと、運転席と助手席の頭上だけをオープンにするモードの2つを備える。ソフトトップは電動で開閉でき、操作ボタンはルームミラーの根元にある。

テスト車のボディーカラーは有償色の「スターライトブルーメタリック」。これを含めて全13色がラインナップされる。
テスト車のボディーカラーは有償色の「スターライトブルーメタリック」。これを含めて全13色がラインナップされる。拡大
荷室の容量は、ソフトトップを閉じたとき(写真)が215リッター、開けたときが160リッター。トランクリッドは下に開くため、荷物は押し込むように収納する。
荷室の容量は、ソフトトップを閉じたとき(写真)が215リッター、開けたときが160リッター。トランクリッドは下に開くため、荷物は押し込むように収納する。拡大
クローズ状態で「EASY LOAD」と書かれたレバーを操作すると、ソフトトップの後端が持ち上がり、荷物の積み込みが楽にできる。
クローズ状態で「EASY LOAD」と書かれたレバーを操作すると、ソフトトップの後端が持ち上がり、荷物の積み込みが楽にできる。拡大

大人になった乗り味

BMW傘下のブランドになってからの初代MINIは、よく言われる「ゴーカートフィーリング」という言葉通り、着座位置が低く、ロールは小さく、ステアリングの動きに対して機敏に反応する類いまれな個性を備えたクルマだった。半面、クルマの完成度という面から見ると、ボディー剛性は必ずしも高くなく、乗り心地は悪く、室内部品の組み付け精度なども高いとはいえず、粗削りな面は否めなかった。

しかし今回、久しぶりにMINIに乗って、工業製品としての完成度や仕上がりの高品質さという面では大きく進化していることが実感できた。さすがにルーフ付きの車体と同等とまではいかないが、オープンボディーであるにもかかわらずしっかりとしたボディー剛性を感じることができるし、乗り心地も大きく向上している。ULK2プラットフォームを使うBMWの「X2」や2シリーズ アクティブツアラーなどが、高い全高とスポーティーな乗り味を両立させるため、乗り心地をある程度犠牲にするセッティングになっていたので、その下のクラスのULK1プラットフォームを使うMINIコンバーチブルの乗り心地もあまり期待していなかったのだが、これはうれしい誤算だった。

BMWの次期「1シリーズ」はX1や2シリーズ アクティブツアラーなどと同じ「ULK2」プラットフォームを採用すると伝えられており、現行型1シリーズの魅力であるスポーティーさとしっとりした乗り心地を両立している点が損なわれることを危惧していたのだが、重心の低い車両であればBMWのFFプラットフォームは操縦安定性と乗り心地を両立できるポテンシャルがあることが分かり、次期1シリーズへの期待も高まってきた。

オープンボディーにもかかわらず、ボディー剛性の高さを感じさせた「MINIクーパーS コンバーチブル」。乗り心地のよさも印象的だった。
オープンボディーにもかかわらず、ボディー剛性の高さを感じさせた「MINIクーパーS コンバーチブル」。乗り心地のよさも印象的だった。拡大
スポーツレザーシートも「MINI YOURSスタイル」に含まれるオプション装備。テスト車には「ラウンジ」と名づけられた、ソファのようなデザインのタイプが装着されていた。
スポーツレザーシートも「MINI YOURSスタイル」に含まれるオプション装備。テスト車には「ラウンジ」と名づけられた、ソファのようなデザインのタイプが装着されていた。拡大
リアシートは2人掛け。50:50の分割可倒機構も備えている。
リアシートは2人掛け。50:50の分割可倒機構も備えている。拡大

粗削りだった時代が懐かしい

話がやや横道にそれたが、オープンカーとしての性能も抜かりない。オープン走行時の風の巻き込みも少なく、快適なドライブを楽しめる。試乗した日は天候が変わりやすく、一時雨がパラつくこともあったのだが、30km/hまでなら走行中も開閉できる電動ソフトトップの恩恵で、ボタン操作ひとつで事なきを得た。

新搭載の7段DCTは、切れ味のいい変速で、スポーティーな雰囲気を従来よりも高めているのは間違いない。ただし、これはフォルクスワーゲンのDSGにもいえることだが、やはり発進時のスムーズさはトルコンATにはまだ及ばない。このあたりは、クルマの性格を重視して変速機を選択したということだろう。

このようにMINIの乗り味が「小さなBMW」と呼ぶべきものになってきているのはある意味歓迎すべきことではあるのだが、一方でMINIの代名詞ともいうべきゴーカートフィーリングは薄れてきていると言わざるをえない。こうなってくると、以前の粗削りだったMINIのゴーカートフィーリングもなんだか懐かしく思えてくるから人間というのは勝手なものだ。

(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

電動ソフトトップの開閉に要する時間は、それぞれ約20秒。30km/h以下であれば走行中でも操作できる。
電動ソフトトップの開閉に要する時間は、それぞれ約20秒。30km/h以下であれば走行中でも操作できる。拡大
従来は馬蹄型(逆U字型)だったデイタイムランニングライトは、切れ目のない円形へと変更されている。
従来は馬蹄型(逆U字型)だったデイタイムランニングライトは、切れ目のない円形へと変更されている。拡大
デイタイムランニングライトはウインカーとしても機能する。
デイタイムランニングライトはウインカーとしても機能する。拡大

テスト車のデータ

MINIクーパーS コンバーチブル

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3860×1725×1415mm
ホイールベース:2495mm
車重:1370kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:192ps(141kW)/5000rpm
最大トルク:280Nm(28.6kgm)/1350-4600rpm
タイヤ:(前)205/40R18 86W XL/(後)205/40R18 86W XL(ピレリ・チントゥラートP7)※ランフラットタイヤ
燃費:15.5km/リッター(JC08モード)
価格:425万円/テスト車=532万8000円
オプション装備:ボディーカラー<スターライトブルーメタリック>(6万9000円)/レザーラウンジ<サテライトグレー>(0円)/カメラ&パーキングアシストパッケージ(10万円)/PEPPERパッケージ(5万4000円)/Apple CarPlay&ワイヤレスパッケージ(7万5000円)/アドバンストテクノロジーパッケージ(13万円)/スポーツドライビングパッケージ<MINI YOURSスポーツレザーステアリング>(8万円)/MINI YOURSスタイル<サテライトグレー>(38万円)/ホワイトミラーキャップ(0円)/アラームシステム(5万円)/ホワイトボンネットストライプ(1万7000円)/harman/kardon HiFiラウドスピーカーシステム(12万3000円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2248km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:205.6km
使用燃料:17.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.5km/リッター(満タン法)/11.7km/リッター(車載燃費計計測値)

MINIクーパーS コンバーチブル
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鶴原 吉郎

鶴原 吉郎

オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。

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