ジャガーXJR575(FR/8AT)
英国最後の猛獣 2018.08.31 試乗記 モデル末期ともうわさされるジャガーのフラッグシップサルーン「XJ」。そのハイパフォーマンスバージョンである「XJR」が、よりパワフルな「XJR575」に進化を遂げた。575psのパワーを“後ろ足”だけで地面にたたき付ける、英国最後の猛獣の走りを報告する。“店じまい”のときが迫る
最近のジャガーは明確にクロスオーバーと電動車にシフトしつつある。しかし、昔ながらの固定観念から抜け出せない(私を含む)日本の中高年は相も変わらず、ジャガーといえば、マルチシリンダーエンジンを積むラグジュアリーサルーンあるいはスポーツカー……である。
そんな中高年の好事家にとっての“ジャガーらしいジャガー”はXJであり「Fタイプ」なのだが、ジャガーの現行ラインナップではこの2車種が1番目と2番目に古い。なかでも、2009年に世界初公開、翌10年に発売されたXJは最古参で、今年末にも次期型XJがお披露目か……なんてウワサもある。
いずれにしても、現行XJが店じまいの時期に入りつつあるのは間違いなさそうだ。最新2018年モデルのXJ(の日本仕様)では、前年まであった2リッター4気筒が新世代の“インジニウム”エンジンに切り替えられることなく、そのままカタログ落ちした。よって、日本で手に入る最新XJは、3リッターV6と、出力の異なる2種類の5リッターV8(いずれもスーパーチャージド版)の3機種のエンジンで、計6グレードとなった。
もっというと、そのうち5リッターV8スーパーチャージドも、遠からず店じまいになりそうな気配がただよう。
間もなく10年選手となるこのV8を積むのは、ジャガーでは現時点でXJとFタイプしかないし、兄弟のランドローバーでも、やはり古参の「レンジローバー」と「レンジローバー スポーツ」が積むだけだ。ウワサされる次期XJもこれまでとはコンセプトが異なり、電動化を前面に押し出すといわれている。これまでのようにV8が主力に据えられる可能性は極めて低い。
まあ、昨年発売された300台限定の「XE SVプロジェクト8」や、もうすぐ発売されるはずの「FペースSVR」など、一部の高性能モデルには、あと少しの間だけV8が使われるかもしれない。ただ、XJを筆頭とする今のジャガー・ランドローバーの古参上級モデルたちが代替わりしてしまえば、おおむねV8の役割は終わる。