ホンダのF1に“次”はない
ハンガリーGPでは、こそっとトロロッソのパドックをのぞくこともできたが、カメラ禁止の現場で見たむき身のパワーユニットはあぜんとするほど小さく、その周りにさまざまな補機がへばりつくことで、ようやく車体に見合うボリュームを得ているという体だった。DFVユニット時代のF1がごちそうだった自分には、神秘的とすらいえる車体構成である。
そして、それを御するドライバーの仕事はさらに理解を超えている。ステアリングのさまざまなスイッチを駆使しながら、迫りくるコーナーの数々にあり得ない速度で正確無比に応答する。生身の人間がそれをやり続けることの驚きは、ハミルトンの10年前と今日とのオンボード映像を動画サイトなどで見比べてもらえばわかるだろう。世界ラリー選手権(WRC)やMotoGPと同じく、F1もとっくのとうにエクストリームスポーツの枠内だったということを実感させられるはずだ。
この現況で、F1の正しい理解や楽しい伝達をやろうというのなら、何かといえば演歌的な人間ドラマに持ち込みたがる僕のようなオッさんの出番は減るべきだと思う。逆にもっと若い人が、“eスポーツ”のような感覚でデジタルにファクトを並べて分析していくこと=見せることになるのかもしれない。そしてホンダもF1のプロジェクトを存続していく上で目的の一片としているだろう、有望人材のリクルーティングという点においては、現場を取り仕切る田辺さんがハンガリーでこんな話を聞かせてくれた。
「これは僕も浅川も同じ考えだと思うんですが、今の事態はリクルーティングうんぬんっていう段階じゃない。もうホンダは参戦と撤退を3回繰り返しているんですね。仮にいま、ここでF1をやめるようなことになったとすれば、次にまた調子が良くなって復活っていう話はないんです。決まりごとではないですけど周りはきっと認めないだろう。われわれ現場の者はそれを肌感覚で察しています。で、ホンダの未来にF1の道はないという状況を、第2期を戦ったわれわれが見届けるようなことになっていいのかと。それだけは絶対避けなきゃならない。だとすれば、成績残して次に進む道を作り続けるしかないんです」
ああ、まさにこういう演歌に弱いんだ自分……と思いつつ、間もなくやってくる鈴鹿での日本GPがなんとも楽しみではないか。
(文=渡辺敏史/写真=本田技研工業、Red Bull Racing、webCG/編集=堀田剛資)
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