トヨタ・クラウン2.5 G(FR/CVT)
挑戦心は買う 2018.09.25 試乗記 トヨタの王道を行くモデルとして1955年以来という長い歴史を持つ「クラウン」が、15代目にして大きな方向転換を行った。クーペライクなエクステリアデザインからも分かるように、狙いはズバリ“ユーザーの若返り”である。覚悟を持って断行したモデルチェンジは成功したのか?あまりにも大胆な変身
通算15代目にもなるトヨタの金看板を、今この時代に刷新する重責を担うことになった開発陣の苦労は察するに余りある。昔ならば、クラウンを担当することは名誉であるばかりか出世の約束手形でもあったけれど、圧倒的に強かった「いつかはクラウン」時代も遠い昔話、このままではジリ貧だという決断を下したトヨタの望みは“若返り”である。
もっとも、長年「販売のトヨタ」(これも死語ではあるが)を打ち出してディーラー網ごとの独立性を重視してきたトヨタにとって、ブランドといえばコーポレートブランドではなくプロダクトブランドである。すなわち、トヨタではなくクラウンのお客さまを重視してきたのだ。そんな、クラウンを何台も乗り継いできたような既存オーナーをすっぱり諦めるのは、なかなかできることではない。だが、それこそが新型クラウンの狙いである。
スタイリングだけを見ても、従来の王冠エンブレム付きの太いCピラーを捨て去り、いわゆるクーペライクなプロファイルを選択した新型クラウンは、60年以上の歴史を持つクラウン史上最大の変身ではないかと思う。だが、私が一番驚いたのは、これまでは時にやぼったいとか、オヤジくさいと揶揄(やゆ)されながら守り通してきた細部への配慮というかディテールのこだわりが見当たらなくなったことである。クラウンだけは、と特別扱いされていた部品が使用されていないようで、誤解を恐れずに言えば安普請のように見える。
かつてはクラウン専用の要件(クラウン・マスト)というものが連綿と引き継がれ、時代に合わせて徐々に薄味になっていたとはいえ、それを尊重していることが確認できたものだが、今回は思い切って捨て去ったように思う。
例えば最大の特徴である6ライトのリアクオーター部分も、近づいて見ると凸凹したウィンドウフレームが目立って煩雑だ。「レクサスLS」のようにフラッシュサーフェスにしたいところだが、そこまでは手が出ない、ということかもしれない。また、内外装のチリ合わせなども他のトヨタ車と差がないようだ。これまでのクラウンユーザーならひと目で分かる、いわばダウングレードを承知の上で、大変な覚悟を持って断行したモデルチェンジということだろう。