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日産ノートe-POWER NISMO S(FF)

金と力は邪魔にならない 2018.09.27 試乗記 2017年に登場した、ニスモの名を冠する「日産ノートe-POWER NISMO」。そのハイパワーバージョンとして「e-POWER NISMO S」が追加された。ガソリンエンジンモデルの「ノートNISMO」(98ps)と「ノートNISMO S」(140ps)の関係と同様に、末尾にある「S」の文字がハイパワーバージョンの証しとなる。

ニスモ=オーテック⁉

平成も終わろうとしている今、つい気を抜くと東京を走る地下鉄のことをまだまだ“営団”と言いそうになる(あらためて紹介するまでもなく正しくは東京メトロ)、昭和感がどこか抜けきれず根底にある者(私だ)にとって、「ニスモ」が「オーテック」だったことにまずは驚く。

かつてニスモは日産のレーシングディビジョンとしてサーキットでその名をはせた関連会社であり、もう一方のオーテックは、プリンス系の出身者によって設立された日産車のコンバージョンを主業務とする関連会社であったはずだ。

昭和がわずか1週間で終わった1989年、平成元年のその年に、R32「スカイラインGT-R」が登場。17年ぶりとなるGT-Rの復活に沸き、そのままの勢いで翌年グループAのホモロゲーションモデルとして超辛口の「GT-R NISMO」が500台限定で販売され、国内のレースはもちろんチューニング界もGT-R一色に染まっていった。

対するオーテックは、R32の世代にこそ鳴りを潜めていたが、次世代の「R33」で2ドアのGT-Rをベースにした4ドアモデル「GT-Rオーテックバージョン40thアニバーサリー」を開発し販売。世間を「あっ」と言わせた。

なんといっても初代以来となる4ドアのGT-Rである。復活した近年のGT-R史にあっても、唯一の4ドアモデルになる。当時、自身の地元である埼玉県警がこの4ドアGT-Rの覆面パトカーを導入したとのうわさが、こちらも「あっ」という間に広まり(しかもこれは事実だった)、「関越(道)は気をつけろ」とのお触れが仲間内に回ったのだ。

結局、何が言いたいのかというと、ニスモとオーテックは、同じ日産系でありながらもコンバージョンモデルの世界ではライバルであったということである。微妙に立ち位置を違えていたとはいえ、TKを中心にしてお互いを意識しあっていた安室奈美恵と篠原涼子ぐらいの関係に近い……とでも言おうか。ちなみに「globe」はTK直系なので、こちらはさしずめ日産本体。そんな解釈で正しい?

日産でトップの販売台数を誇る「ノート」の人気をけん引する「ノートe-POWER」。「NISMO」シリーズはそのスポーティーバージョンという位置づけ。


	日産でトップの販売台数を誇る「ノート」の人気をけん引する「ノートe-POWER」。「NISMO」シリーズはそのスポーティーバージョンという位置づけ。
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ガソリン、e-POWER(ハイブリッド)とも「NISMO」シリーズには全5色のボディーカラーが用意される。撮影車両は「ブリリアントホワイトパール」。


	ガソリン、e-POWER(ハイブリッド)とも「NISMO」シリーズには全5色のボディーカラーが用意される。撮影車両は「ブリリアントホワイトパール」。
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ボディーサイドに「e-POWER」のエンブレムを装着。


	ボディーサイドに「e-POWER」のエンブレムを装着。
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日産のラインナップの中でも「NISMO」は特別な存在として注目されている。「マーチ」や「リーフ」など、全7車種で展開している。


	日産のラインナップの中でも「NISMO」は特別な存在として注目されている。「マーチ」や「リーフ」など、全7車種で展開している。
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「セレナe-POWER」のパワーユニットを移植

現在、企業としてのオーテックは、ピュアスポーツ寄りのニスモと、プレミアムスポーツ寄りのオーテックにブランドキャラクターを分け、コンバージョンモデルを展開している。今回のノートe-POWERはニスモブランドなので、言われなくともスポーツ寄りの仕上がりということになる。

では、すでに登場しているノートe-POWER NISMOに対して今回“S”が加えられたノートe-POWER NISMO Sはどこが違うのか。答えはシンプルである。詳しくはニュース記事に明るいので概要のみにとどめるが、エクステリアではメーカーオプションだったLEDヘッドランプが標準装備となり、「NISMO」のエンブレムの末尾に「S」が追加された。以上である。

この変更のなさすぎるトップモデル(と言っていいはずだ)の登場がファンの間でどのように受け止められるのか少々心配ではあるものの、個人的には「e-POWER NISMO」と同等の仕様でも十分と判断したニスモの開発陣を支持したい。

では、“S”の“S”たるポイントはどこにあるのか。こちらも答えはシンプル。パワーユニットである。e-POWER NISMO Sでは、モーターの最高出力が136ps、最大トルクは 320Nmと、ベースモデルとなった同109ps、同254Nmのe-POWER NISMOに対して、最高出力で25%、最大トルクで26%の向上を果たしている。このスペックを見て、「なんだ、『セレナe-POWER』と同じか」と言ってしまえばそれまでだが、小さなボディーに上級車のパワーユニットをインストールするという手法は、チューニングの王道でもある。

例えばかつてAMGは、ミディアムクラスの「C124」に「Sクラス」用のV8を6リッターに排気量アップし搭載、「AMG 300CE 6.0ハンマーワイドバージョン」としてチューンドコンプリートカーを販売した。BRABUSも負けじとSクラス用のV12を7.3リッターに排気量アップ、「W124」のノーズに無理やり押し込め「BRABUS 7.3」として対抗した。

と、そんな余談はともかく、e-POWER NISMOと同じ重量1250kgのボディーに、25%増となる最高出力136psのパワーユニットを搭載したのだから遅いわけはない。

1.2リッター直3 DOHC 12バルブエンジンで発電し、バッテリーを介してモーターを駆動するシリーズハイブリッドを採用。モーターの最高出力は136psとなる。
1.2リッター直3 DOHC 12バルブエンジンで発電し、バッテリーを介してモーターを駆動するシリーズハイブリッドを採用。モーターの最高出力は136psとなる。拡大

日産の電動化車両ではおなじみのデザインを踏襲したシフトセレクター。「e-POWER NISMO」よりも「Bレンジ」の走行モードが2つ増え、全部で6つのドライブモードを備える。


	日産の電動化車両ではおなじみのデザインを踏襲したシフトセレクター。「e-POWER NISMO」よりも「Bレンジ」の走行モードが2つ増え、全部で6つのドライブモードを備える。
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エンジンは発電専用だが、ガソリン車の「NISMO」と同じテール径がφ85のエキゾーストテールエンドが装備される。


	エンジンは発電専用だが、ガソリン車の「NISMO」と同じテール径がφ85のエキゾーストテールエンドが装備される。
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タイヤ、ホイールを含め、足まわりの装備やセッティングは、先に登場した「e-POWER NISMO」と同一仕様。


	タイヤ、ホイールを含め、足まわりの装備やセッティングは、先に登場した「e-POWER NISMO」と同一仕様。
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ゼロ発進はホイールスピン寸前

クルマを車庫入れするような低速ではもちろん分からない。しかし、ゼロ発進でe-POWER NISMOとe-POWER NISMO Sの違いはすでに明確となる。ベースになったe-POWER NISMOのアクセルべた踏みの発進加速は実に爽快だ。タイヤの縦グリップをちょうどよく使って元気に加速する。それはもう、モーターの加速はこんなにも強力なのか、と感心するほど気持ちがいい。

しかし、同じタイヤ(195/55R16 87Vの「ヨコハマDNA S.drive」)を履いたe-POWER NISMO Sでは、ゼロ発進時に「カカッ」と軽くホイールスピンしたかのような感触があった。もちろん電子デバイスのおかげでホイールスピンはしないのだが、その一歩手前であることは明らかだ。ニスモカーズ開発部車両性能計画グループの小林淳文氏によれば「同じタイヤで(グリップ力が)ギリギリ間に合った」とのこと。両車の車重も1250kgと同一。よって敢えて銘柄やサイズの変更を行ってはいない。

そんなフル加速を続け、バッテリーに蓄えられた電気を使い切ってしまえば、カタログ数値である136psが楽しめなくなる。しかし、現実的に136psを使い切るようなシチュエーションに陥ることなど、さほど多くはないだろう。

では実際どれぐらい136psのフル加速が味わえるのかといえば、それは「時間にして約60秒」(前述の小林氏)。数字で見れば「そんなもの?」と感じるが、公道ではよほどの勇気でもない限り60秒間連続でアクセルをべた踏みなどできない。なにせ標準モデルのノートe-POWERでさえ、0-100km/h加速タイムは8秒ちょっとである。アクセルを戻せば回生ブレーキが働き充電を開始するので、例えばサーキット走行でもしない限り、136psが途切れるような現実は訪れないはずだ。

この出力向上に合わせてドライブモードが4パターンから6パターンに変更され、「S」と「ECO」の両モードにも「Bレンジ」が追加された。SモードでのBレンジ走行は、よりメリハリのある加減速が味わえ、ワインディングロードなどではこのモードが一番活躍しそうである。

ちなみに最高速度も向上しており、e-POWER NISMOが155km/hであるのに対して、e-POWER NISMO Sでは10%あまり上回る170km/hとなっている。

タイヤは「ヨコハマDNA S.drive」でサイズは195/55R16。「e-POWER NISMO」と同一の仕様だ。


	タイヤは「ヨコハマDNA S.drive」でサイズは195/55R16。「e-POWER NISMO」と同一の仕様だ。
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「e-POWER NISMO」ではメーカーオプションだったLEDヘッドランプが、「e-POWER NISMO S」では標準装備になった。


	「e-POWER NISMO」ではメーカーオプションだったLEDヘッドランプが、「e-POWER NISMO S」では標準装備になった。
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赤くペイントされたドアミラーも「NISMO」シリーズの識別点(ボディーカラーがレッドの場合は黒いカラーリングを採用)。


	赤くペイントされたドアミラーも「NISMO」シリーズの識別点(ボディーカラーがレッドの場合は黒いカラーリングを採用)。
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ボディーアンダーパネルを、クロスメンバーやステーなどによって補強。ガソリンエンジン搭載の「NISMO」シリーズよりもパネル強化部分は多い。


	ボディーアンダーパネルを、クロスメンバーやステーなどによって補強。ガソリンエンジン搭載の「NISMO」シリーズよりもパネル強化部分は多い。
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足にはまだまだ伸びしろアリ

今回、試乗はe-POWER NISMOとの乗り比べを含め、すべて日産のテストコースで行われた。スラロームセクションでは、タイヤのグリップ力とパワー、ハンドリングのバランスが十分に取れていることを確認できた。電動パワステはニスモの手による専用チューニング。スラロームを進めていくにしたがって、重さが変わるような気配もなく、アクセルのオン/オフと最小限のステアリング操作でクルマは軽いスキール音を残しつつ面白いように曲がっていく。

日産の中では古いほうとなったプラットフォームを使用しているにもかかわらず、e-POWER NISMO Sの持つこのフットワークはお見事である。きっとボディー各所で行われた補強(これはe-POWER NISMOとまったく同じ)が効いているのだろう。絶対的なボディー剛性こそ高いとは思わないが、標準モデルから乗り換えると、その違いを顕著に感じるはずだ。

テストコースにアップダウンはあったがおしなべて路面状況がよく、公道で遭遇するはずの荒れた路面で、いったいどんな走りを見せるのかはきちんと確認できていない。ただ、上りから下りに転じる左コーナーの頂上で、イン側のトラクションが一瞬抜けるように感じるシーンがあった。ダンパーはKYB製。現状、硬めのセットアップでいかにもチューニングカー然と仕上げているが、足をもっと動かして路面追従性を向上させるほうがこのクルマには似合っているような気がした。

もっともそうしたシーンでもオプション装備のNISMO専用チューニングRECARO製スポーツシートのおかげで、ドライバー(と助手席のゲスト)は、体をしっかりとホールドされている。今どきレカロシート? と、派手なデザインと乗り降りのしづらさに(昭和じゃないんだからと)懐疑的だったが、走るための装備として、老舗ブランドは老舗なりの納得いく機能を持ち合わせていると感心。ドライバーの満足度はきっと高いだろう。しかし、家族(助手席の住人たる大切な方)も同様にそのおすすめのオプションを好意的に思ってくれるかは別問題なので、(乗るたびにブツブツ言われたくなければなおさら)購入前に試してもらったほうがいい。

最後に、もしも予算に問題がないなら、ノートのNISMOラインナップにおいておすすめは断然e-POWER NISMO Sである。ひねりも何もない予知調和的な結論で申し訳ないが、ベースモデルのe-POWER NISMOにプラス18万3600円でこのパフォーマンスとLEDヘッドランプが付いてくるのだ。金とパワーはあっても邪魔にならないと思っている自分に、やはりそれを否定はできないのである。

(文=櫻井健一/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)

「NISMO」シリーズに共通して採用されるアルカンターラと本革のコンビネーションデザインのステアリングホイール。赤いセンターマークのステッチがポイント。


	「NISMO」シリーズに共通して採用されるアルカンターラと本革のコンビネーションデザインのステアリングホイール。赤いセンターマークのステッチがポイント。
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インテリアデザインは、標準モデルと大きくは変わらない。スピードメーターとエアコンスイッチの上に「nismo」のロゴがあしらわれている。


	インテリアデザインは、標準モデルと大きくは変わらない。スピードメーターとエアコンスイッチの上に「nismo」のロゴがあしらわれている。
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ホールド感が抜群のレカロシートはガソリン車の「NISMO」以外のモデルで選択可能。標準仕様のシートと同じく「nismo」のロゴが刺しゅうされている。
ホールド感が抜群のレカロシートはガソリン車の「NISMO」以外のモデルで選択可能。標準仕様のシートと同じく「nismo」のロゴが刺しゅうされている。拡大

リアシートは、フロントシートに合わせたカラーコーディネート。6:4分割可倒式のバックレストを採用する。


	リアシートは、フロントシートに合わせたカラーコーディネート。6:4分割可倒式のバックレストを採用する。
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テスト車のデータ

日産ノートe-POWER NISMO S

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4165×1695×1535mm
ホイールベース:2600mm
車重:1250kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:83ps(61kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103Nm(10.5kgm)/3600-5200rpm
モーター最高出力:136ps(100kW)/2985-8000rpm
モーター最大トルク:320Nm(32.6kgm)/0-2985rpm
タイヤ:(前)195/55R16 87V/(後)195/55R16 87V(ヨコハマDNA S.drive)
燃費:--km/リッター(JC08モード)
価格:267万1920円/テスト車=342万4699円
オプション装備:ボディーカラー<ブリリアントホワイトパール>(3万7800円)/日産オリジナルナビ取り付けパッケージ<ステアリングスイッチ、リア2スピーカー、GPSアンテナ、TVアンテナ、TVアンテナ用ハーネス>(2万7000円)/インテリジェントアラウンドビューモニター<移動物検知機能付き>+スマート・ルームミラー<インテリジェントアラウンドビューモニター表示機能付き>+踏み間違い衝突防止アシスト+フロント&バックソナー+ヒーター付きドアミラー(9万7200円)/NISMO専用チューニングRECARO製スポーツシート<前席>(27万円)/ヒーター付きドアミラー+PTC素子ヒーター+リアヒーターダクト+高濃度不凍液(2万4840円) ※以下、販売店オプション ETCユニット 日産オリジナルナビ連動モデル MM516D-W、MM316D-W用(2万5920円)/日産オリジナルナビ取り付けパッケージ付き車用MM516D-W(21万8667円)/デュアルカーペット<ブラック>e-POWER車用/e-POWER寒冷地仕様車用(2万4300円)/マルチラゲッジボード(2万7052円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

 

日産ノートe-POWER NISMO S
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