ターボラグを抑えるための試み

回転数が上がりにくいのはタービンの径が大きいため、との考えから作られたのが、担当する気筒を2つに分けてタービンを小径化するツインターボである。特に多気筒エンジンには効果のある方法だ。1986年の「ポルシェ959」では、大小2つのターボを回転域に応じて使用するシーケンシャル方式が採用された。低回転では1基だけが稼働し、高回転ではもう1基のタービンを追加する仕組みである。ターボラグをなくすとともに、高回転時に大きなパワーを得ることができた。

排気の流路を2つに分けて効率を高めたのが、ツインスクロールターボ。排気干渉を避けるための工夫で、4気筒エンジンの場合、1番と4番、2番と3番の燃焼室からの排気がそれぞれまとめられてタービンハウジングに向かう。スロットル開度が低い状態でも効率的に排気の流れをタービンに導くことができるので、レスポンスが向上する。

排ガスの導入角度と通路面積を変化させる方法も試みられた。タービンハウジング内に可変ノズルを設け、エンジンの回転数に応じて流路を切り替えるのだ。レスポンスを高めるには通路面積が小さいほうが有利だが、ハイパワーを得るためには広い流路が必要だ。可変ノズルを使うことで、どちらの条件にも適応させることが可能となった。

低回転時の過給を機械式スーパーチャージャーに委ねるツインチャージャーも登場した。スーパーチャージャーでレスポンスの良さを確保し、高回転域ではターボで過給する。弱点を補い、お互いの長所を引き出す方法だ。1985年に世界ラリー選手権に投入された「ランチア・デルタS4」が採用し、すさまじい戦闘力を見せつけた。

F1では1979年にルノーがターボエンジンを搭載したマシンで初優勝し、それ以降はターボ全盛の時代を迎える。ターボテクノロジーを極めたホンダは1.5リッターから1000馬力以上のパワーを絞り出し、F1のトップに君臨した。レースでも市販車でも、ターボによるパワー競争が繰り広げられた。

1987年に登場した「ポルシェ959」。グループB規定のモータースポーツで活躍すべく開発された高性能モデルで、シーケンシャルツインターボのほかにも、フルタイム4WD、可変ダンパーなど、さまざまな先進技術が用いられていた。
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ターボチャージャーへ向かう流路を分けることで、過給のレスポンスを高めたのがツインスクロールターボである。写真は同ターボを採用した「レクサスNX」の2リッターターボエンジン。
ターボチャージャーへ向かう流路を分けることで、過給のレスポンスを高めたのがツインスクロールターボである。写真は同ターボを採用した「レクサスNX」の2リッターターボエンジン。拡大
可変ジオメトリーターボは、エンジン回転数が低く、排気の量が少ない時はノズルを絞って流速を高め、排気の量が増えるとノズルを開いて最適に過給圧を制御する仕組みとなっている。
可変ジオメトリーターボは、エンジン回転数が低く、排気の量が少ない時はノズルを絞って流速を高め、排気の量が増えるとノズルを開いて最適に過給圧を制御する仕組みとなっている。拡大
低回転域をスーパーチャージャーで、高回転域をターボで過給する、ツインチャージャーを搭載した「ランチア・デルタS4」。世界ラリー選手権で圧巻の強さを見せたが、不運な事故もあって年間タイトルに輝くことはなかった。
低回転域をスーパーチャージャーで、高回転域をターボで過給する、ツインチャージャーを搭載した「ランチア・デルタS4」。世界ラリー選手権で圧巻の強さを見せたが、不運な事故もあって年間タイトルに輝くことはなかった。拡大
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