ロバの代わりに

ジョヴァンニ・ロッシさんは1969年生まれである。島のワイナリー、センティオー!のオーナーだ。

「私の祖先は、島の生き残りだ」。島では16世紀中頃、北アフリカから襲来した海賊によって大虐殺が行われた。彼の系図をさかのぼると、当時のわずかな生存者に行き着くのだという。

島内の教育機関は中学まであるが、高校からは本土に渡って勉強しなければならない。ジョヴァンニさんはフィレンツェの大学を出て一度は公認会計士となった。だが、故郷への思いを断ち難く、島に戻って2009年にワイナリーを創業した。

さて、アペである。これまでジョヴァンニさんには3台の、タバコ店を営む父親には5台のアペ歴があるという。

島の道は細く狭く、曲がりくねっている。日本でいえば広島県の尾道風である。そうした環境でアペは、移動手段として最適なのだと証言する。「島では1980年代までロバが荷物運搬用に使われていた。アペはその代わりとしてぴったりなんだよ」。村には自動車ディーラーはおろか二輪車販売店もない。

「新車でも中古車でも本土で買って、あとは積載車で島までフェリーで運んでもらうんだ」とジョヴァンニさんは教えてくれた。

島で最も標高が高い村ジーリオ・カステッロは人口約五百数十人。そこにも「アペ50」がたたずんでいた。
島で最も標高が高い村ジーリオ・カステッロは人口約五百数十人。そこにも「アペ50」がたたずんでいた。拡大
ジーリオ・カステッロの村役場脇にて。島は16世紀から18世紀末にかけて北アフリカの海賊による襲撃をたびたび受けた。
ジーリオ・カステッロの村役場脇にて。島は16世紀から18世紀末にかけて北アフリカの海賊による襲撃をたびたび受けた。拡大
ヴァッカレッチェ灯台をのぞむ丘で。
ヴァッカレッチェ灯台をのぞむ丘で。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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