ハリケーンの中で最後の戦い

ロバート・マッコールの人物造形はとても魅力的なのだが、問題があるとすれば強すぎることだ。どんな敵が現れても負けそうにないと、サスペンスが弱まってしまう。チャック・ノリスがいい例である。彼は大勢の敵がマシンガンで撃ちまくっても身を隠すことなく堂々と歩き、決して弾は当たらない。観客はチャック・ノリス・ファクトを思い出しながら弾丸が彼を避ける様子を楽しむのだ。

マッコールが最後に戦う相手は4人。常人ならば苦労するはずだが、彼にとってはこの程度の差なら楽勝である。少しでも不利な状況を作り出すため、製作陣が考え出したのは戦いの舞台を極限状況に置くことだった。対決は巨大ハリケーンが来襲する中で行われる。簡単に言うが、本当にハリケーンがやってくるまで待つのは大変だ。『監督失格』の平野勝之監督はかつて南大東島まで行って台風の中でAVを撮影しようとしたが、空振りに終わったと聞く。だからといってフルCGでごまかすのでは味気ない。

撮影では街を丸ごと占拠して巨大な送風機やエアコンプレッサーを持ち込み、強風や高波を作り出したそうだ。おかげで迫力満点の映像が生み出されたが、日本の公開日はちょっとタイミングが悪かった。もっと強力な台風が列島を縦断し、自然の威力をリアルに体験したばかりなのだ。

この映画でもデンゼル・ワシントンは必殺仕事人としての超絶的な能力を見せつけたわけだが、本人が現実世界で強いわけではない。ドウェイン・ジョンソンのようなホンモノの格闘家ではないので、マッコールが強く見えるのはひとえに彼の演技力のたまものである。昨年の作品『ローマンという名の男』では融通のきかない不器用でのろまな弁護士を演じていた。彼の正義感は腐った法律の世界では力を持たなかったが、マッコールなら19秒で解決できたのだ。

(文=鈴木真人)

 
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『イコライザー2』
2018年10月5日(金)全国ロードショー
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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