「思いつき」がどんどんカタチに

普通の企業ならテキトーにあしらわれているような気持ちになるが、ヤマハの場合は本当にそうかもしれない。会社の成り立ちや経緯がそれを物語っているからだ。

創業者の山葉寅楠(やまはとらくす)は時計や医療機器の修理技師として働くかたわら、なぜかオルガンの修理、製作、輸入を経て本格的に楽器産業へ進出。そこで培った木工のノウハウで飛行機のプロペラを作り、戦後はその機械加工設備を二輪車の生産へと転用。バイク用エンジン技術をボートの船外機に生かしつつ、ついでとばかりに船体そのものも作るようになった。

その時、船体に採用されていたのが軽くて水を通さない当時の新素材FRP(強化繊維プラスチック)だ。水が侵入しないのなら閉じ込めておくことも可能なため、今度はそれをプール事業に活用して……と次々にひらめいたアイデアをなんらかのカタチに変え、やがてPCや風力発電、バイオ事業などにも進出していったのである。

後に撤退した分野も多いが、要するにヤマハという会社は極めてピュアなのだと思う。「こんなことができたらおもしろい!」という思いつきを肯定し、ゴーサインを出す土壌があり、それが今も残されているのだ。

現在、ひと口にヤマハといっても楽器や音楽事業を展開する「ヤマハ」とバイクやマリン事業を中心に手がける「ヤマハ発動機」の大きく分けて2社がある。いずれにしてもそこから送り出される製品の多くは生活必需品ではなく、発展途上国における浄水装置や辺境地で求められる特殊車両などを除けば、趣味をサポートするモノが大半だ。しかしながら、それがあるからこそ、人々の暮らしにはゆとりやうるおいがもたらされるのである。

ヤマハのマリン事業は、1960年に初めて船外機を量産したのが発端。以後、半世紀以上の歴史を誇る。
ヤマハのマリン事業は、1960年に初めて船外機を量産したのが発端。以後、半世紀以上の歴史を誇る。拡大
ヤマハは産業用無人ヘリコプターも手がけている。写真は2018年6月に発売された「YMR-08」。スピーディーかつ着実な農薬散布を可能とする。
ヤマハは産業用無人ヘリコプターも手がけている。写真は2018年6月に発売された「YMR-08」。スピーディーかつ着実な農薬散布を可能とする。拡大
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