パリでうければ世界でイケる

そしてダイムラーは、EVとなったスマートをカーシェアに大いに利用するという。2008年から展開されている「Car2go(カートゥーゴー)」だ。これはスマートを使ったカーシェアリング事業で、すでに欧米のさまざまな都市で導入されている。フランス・パリでは、EVのスマートを使ったサービスを2019年にスタート。「98.3%の人がEVを買わなくても、カーシェアなら話は別」というわけだ。

とはいえ、パリにおけるEVのカーシェアビジネスは厳しい。これまでもパリには、「Autolib'(オートリブ)」というサービスが存在していた。これはオリジナルの小型EVを使った、官民の共同会社によるカーシェアサービスで、2011年に開始された。パリ市内に1000カ所以上設けられたカーステーションをベースに24時間自由にEVを利用できるというもので、借り出した場所とは別のカーステーションに乗り捨てることも可能であった。ピニンファリーナが担当した専用車両のデザインも、なかなかモダンだった。

このビジネスは世間の話題を集め、上々のスタートをきった。しかし残念ながら、オートリブの利用者は近年になって激減。2018年の夏を前にサービスは終了に追い込まれてしまった。理由のひとつは、ライバルの台頭。自転車シェアリングの利用者が増えているのだ。さらにいえば、いまパリの街中には電動キックスケーターのシェアリング「Lime-S」を利用する人も数多く見られる。電動キックスケーターは、そのまま地下鉄やバスなどの公共交通機関に持ち込むこともできる。意外に使い勝手の良さそうなサービスなのだ。

ウーバーといったライドシェアの普及も痛手だろう。そうした新たなライバルの勢力拡大にEVカーシェアが敗れたというのがパリの実情で、ダイムラーは、そこにスマートEVによるカーシェアで参入しようというのだ。

98.3%がEVを買わないという人たちに向けてEQシリーズをリリースし、さらにカーシェア激戦地であるパリへCar2goを導入する。まさにいばらの道だが、これを乗り越えたならば、その先にはきっと大きな成功がある。メルセデス・ベンツの奮闘に期待しよう。

(文=鈴木ケンイチ/写真=ダイムラー、Lime/編集=関 顕也)

こんなスマートのEVが、今後、日本を含む世界の都市を駆け回る? パリにおけるカーシェアサービスのゆくえに注目が集まる。
こんなスマートのEVが、今後、日本を含む世界の都市を駆け回る? パリにおけるカーシェアサービスのゆくえに注目が集まる。拡大
パリでは2011年から官民の共同会社によるカーシェアが提供されてきたが、自転車や電動キックスケーター(写真)のシェアリングに押される形で、サービスは終了に追い込まれた。
パリでは2011年から官民の共同会社によるカーシェアが提供されてきたが、自転車や電動キックスケーター(写真)のシェアリングに押される形で、サービスは終了に追い込まれた。拡大
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