ボルボXC40 T4 AWDモメンタム(4WD/8AT)
そこかしこにあふれる“いいもの感” 2018.10.21 試乗記 あっさり完売してしまった「ボルボXC40」の導入記念モデル「T5 AWD R-DESIGNファーストエディション」に続き、カタログモデルの「T4 AWDモメンタム」に試乗することができた。装備“マシマシ”の記念モデルに対して、こちらはいわば“素”のモデル。その仕上がりやいかに? 拡大 |
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バックオーダーを抱える人気ぶり
フランクフルトモーターショーの直前となる、2017年9月21日にイタリアはミラノで発表されたXC40。コンパクトクラスではボルボ初のSUVであり(「V40クロスカントリー」はやはりSUVとは呼べない)、分類上はCセグメントに属する。
日本では2018年3月28日に発表、同日に販売を開始したが、実はその正式発表の3カ月前となる1月から導入記念モデルであるXC40 T5 AWD R-DESIGNファーストエディションの予約注文受け付けをスタートさせた……ところ、これが予想以上(失礼)の反響があり、納車可能数をあっさりと超えた注文が舞い込んでしまった。
納車まで時間がかかってしまえば、他車に乗り換えられる可能性も出てくる。そこでボルボは(あわててだろう)XC40が納車されるまでの間、つなぎとして、車両本体価格の1.0%(税込み)の月々均等支払いで別のボルボ車(もちろん新車だ!)に乗れる「スマボ(ブリッジSMAVO)」なるウルトラC的施策(いや、もはや反則といってもいい)を発表。これが結構利用されているとかいないとか。
良く言えば、これはボルボのおもてなしや感謝の心であり、うがった見方で悪意たっぷりに表現すれば、それほどまでに必死に囲い込みをしている、ということになる。もしも自分がユーザーだったら……そこはシンプルに最小限の支払いで、他のモデルも新車で何カ月間か楽しめるのだからと、ウキウキしながら利用するだろう。
北欧イメージたっぷりのディーラーショールームでは、「ウチのXC40の納車が遅くなってすみませんねぇ。お客さま、せめて納車されるまでの半年間、ボルボの中から好きなモデルを選んで乗っているというのはいかがでしょう。いえいえ、お代なんてわずかばかりの頭金と、車両価格の1.0%という月々の支払いだけで結構ですから。ね? いかがです?」みたいなやり取りがありそうだ(もちろん勝手な想像である)。どのモデルを選ぼうが、“車両価格の1%”という支払額はインパクト大。単純すぎる自分などは、その場でボルボの術中にまんまとハマってしまいそうだ。
兄貴分の単なる縮小版ではない
そんな導入直後、人気沸騰中のXC40にあって、今回試乗したT4 AWDモメンタムは、通常カタログモデルの四駆のエントリーグレードである。2017年のロサンゼルスモーターショーの会場で初めて実車を見た際には「結構コンパクトで、日本の道路事情にもピッタリだろう」と感じ、そうした素直な感想を(無責任にもあちらこちらで)書き連ねたが、こうしてあらためて日本の道に置いてみると、思ったほど小さくはない。
全長4425mm、ホイールベース2700mmという寸法こそCセグのそれで、メルセデスの現行「Bクラス」と同じぐらいになる。ただし全幅は1875mmもあり、1660mmの全高も合わさると、そのボリューム感は圧倒的。「縦にも横にも結構でかい」という感想がつい漏れてくるのである。
前後を切り詰めた短いオーバーハングを採用するエクステリアデザインはスタイリッシュで、レンガのようなボルボを知る(われわれのようなオジサン)世代にも“らしさ”をイメージさせる。ただし、Cピラー根元が大きくキックアップしているデザインは、サイドライン上のアクセントになっていて確かに格好はいいが、「デザインのためのデザイン」であることが見え見えで疑問が残る。もちろん運転席から斜め後方を振り返ってみても、実際その部分の死角は大きく、運転中のストレスにもなりかねない。
誤解を恐れずに言えば、「XC60」が「XC90」の縮小進化版としてデザインされているのに対して、XC40は似ているが明らかに違う。当初は、XC40にもXC90の縮小版とするデザイン案があったという。しかし、“大/中/小”とボディーサイズが違うだけのSUV 3部作ではなく、パーソナルユースを考慮したデザインをあえてXC40に採用したとボルボは主張する。
XC90のサイドビューが水平基調で優雅さとフラッグシップらしい大きさを表しているとすれば、リアフェンダー上部が少し斜めに上がったXC60は筋肉質でスポーティーなイメージ。対してXC40では、遊び心のあるポップで都会的な印象。個人的にはボルボというメーカーが(想定ユーザーとして)大好きであるはずの、ファミリーの匂いさえ感じない。
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マイルドなフィーリング
ほぼ同じ部品を使用するのにビジネスという大人の事情で「T5」の最高出力252ps、最大トルク350Nmに及ばない、数字的に見劣りのする最高出力190ps、最大トルク300Nmというスペックの2リッター直4ターボエンジンは、しかし、1690kgという車重であっても十分に“不足なし”と思わせるパフォーマンスだ。
8段ATとのマッチングも良く、流れに乗るためにちょっと加速したいシーンなどではサクッと1段ギアを落とし、即座に加速態勢に入る。もちろん信号待ちからのゼロ発進でも、ストレスを感じることはない。パワーはあるに越したことはないが、日常使いなら10kg/psを切るパワーウェイトレシオであれば必要にして十分である。
ステアリングフィールは、タイヤの丸さを感じる終始マイルドなフィーリングだ。いまだに絶賛流行中の“アジリティー(俊敏性)”をことさら強調することもなく、かといってだるくもない。しっかりとした手ごたえと硬質でダイレクト感あふれるドイツ系のプレミアムSUVとは完全に異なる、「ああそういえば『240』系とかこんな感じだったかも」と昔を懐かしく思わせる仕上がりだ。いつかどこかで読んだ(と、これはもうその出典さえ記憶していないも同然だ)、“五感の刺激が記憶を完成させる”というフレーズがよみがえってきた。もっとも、この場合は記憶を喚起させる、だが。
そして白眉(はくび)は、この操安性と乗り心地の見事なまでの両立だった。高速道路の継ぎ目を軽くいなし、キャビンには角の取れたわずかなショックが「タタン」と伝わるだけの乗り心地は、洗練という言葉以外に適切なものが見つからない。路面への追従性は高く、タイヤの動きが手に取るようにわかるのだ。
コーナリング姿勢は、ドライバーの感覚とほぼピタリと一致する。XC90のように、重い上屋が遅れてグラッとくるような違和感はない。シャープとはいえないが、ドライバーの癇(かん)に障るような嫌な感じがどこにもないのは素晴らしい。次期「S40/V40」とも共有するといわれているCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)と呼ばれる新開発プラットフォームは初出だが、この完成度はなかなかだ。
短い試乗時間に確かめた走りにおけるネガな要素は、前述の斜め後方の視界のみ、である。
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いいものに囲まれた空間
室内は上級モデルの流れをくんだ、シンプルだが品のあるデザインでまとめられている。カーペットとドアパネルを同色の織布でコーディネートしたキャビンは、ボルボの生まれ故郷を示す“北欧”というキーワードから受けるイメージを絶妙なさじ加減で表現している。派手さはないが(カラーリングによっては派手にもなろうが)、クルマのインテリアにはまだまだデザイン的可能性があることを教えてくれたような気がする。プレミアムブランドを自認する日本のメーカーのデザイナーに、ぜひともXC40のインテリアを見た後で感想を聞きたいと思ってしまう。
前席にはティッシュボックスが丸々ひとつ入るセンターコンソールやごみ入れにピッタリのスペースも用意されており、細かな配慮が行き届いているといわれる日本の軽自動車もうかうかしていられない。「そういえばウチのクルマではティッシュボックスってどこに置いていたっけ?」と思い出してほしい。これはなかなか実用的で便利な機能的配慮である。
ユニークなのは、ドアに“あるべきものがない”という点だ。その“ないもの”とは、ズバリ、スピーカーのウーファーだ。フロントウィンドウ下(ボンネット内)に「エアウーファーテクノロジー」とボルボが呼ぶスピーカーシステムを置くことによって、通常ドアの下部に位置するウーファーを廃止。その分ドアポケットを大きくしたのだ。何かと身の回りのモノが多くなりがちな現代生活では、実用的で利便性に富んだ配慮だといえる。もちろんドアにウーファーがなくても、オーディオは(試乗車は600Wのharman/kardonプレミアムサウンドオーディオシステムを装備)門外漢の自分が聴いてもケチのつけようがない「いい音」であったことをあわせて報告しておく。
刺激がタップリの加速感や意のままに操れる感覚をクルマの“動の魅力”だとすれば、XC40は平凡な点数しか与えられないかもしれない。しかし、いいもの(それはデザインであったり、素材であったりする)に囲まれた空間そのもので快適に移動できる幸せもまた、クルマの魅力のひとつである。しかもカッコよさと実用性、さらにボルボ自慢の最新スペックのADASによる安全性も併せ持っているとしたらどうか。
「XC40に乗った?」と聞かれたら、「めちゃくちゃイイ!」と言わずにはいられないのだ。ただし、個人的には大好きなボルボのディーゼルは待っていても入ってこないので(未定ではなく、導入予定はないとのこと)、「なんだよ」という感じでもあるのだが。
(文=櫻井健一/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ボルボXC40 T4 AWDモメンタム
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4425×1875×1660mm
ホイールベース:2700mm
車重:1690kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190ps(140kW)/4700rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1400-4000rpm
タイヤ:(前)235/50R19 99V/(後)235/50R19 99V(ピレリPゼロ)
燃費:13.2km/リッター(JC08モード)
価格:459万円/テスト車=525万9000円
オプション装備:ホワイトカラールーフ(6万6000円)/フロントシートヒーター(4万5000円)/フロントパークアシスト(5万円)/ステアリングホイールヒーター(2万6000円)/チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ(20万6000円)/パワーゲート<ハンズフリーオープニング/クロージング機構付き>(5万8000円)/ワイヤレススマートフォンチャージ(2万8000円)/19インチアルミホイール“5本スポーク”ホワイト/ブラック<7.5×19>&235/50R19タイヤ&ホワイトカラードアミラーカバー(9万円)/harman/kardonプレミアムサウンドオーディオシステム<600W、13スピーカー、サブウーファー付き>(10万円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:3405km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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