ランクルが選ばれていたうれしさ

ティエリー氏は後日、RRの法務部門から極めて丁重な文面で、RRのマスコットであるスピリット・オブ・エクスタシーを掲げた車両を、今後公の場で走らせないように、との警告を受け取ったという。

GMのエンジン、トヨタの駆動系なのだから、RRの抗議は至極当然の話である。

しかし1980年代の英国車といえば、1970年代のいわゆる「英国病」の尾を引き、最低の信頼性で知られていた。

そうした状況ゆえ、仮にティエリー氏が完走していたら、RR本社はマスコミが報じるまま、この“なんちゃってRR”をムフフと苦笑しながら放置・看過していたかもしれない。

いっぽうティエリー氏にしてみれば、今日メーカー自らが砂漠も走れる「カリナン」を平然と造っているのはジョーク以外の何ものでもないだろう。

昨今、日本のメディアが盛り上げる「ニッポンすごい」の風潮には賛同しかねるボクである。だが三十数年前に、世界の数あるメーカーの中からトヨタの駆動系が選ばれていたことに、やはりうれしさを感じてしまうのである。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=藤沢 勝)

ジョヴァンニ・デイさんの「ビートル」は、同じフラット4エンジンでも、「アルファ・ロメオ・アルファスッド」のものに換装されていた。2015年7月。
ジョヴァンニ・デイさんの「ビートル」は、同じフラット4エンジンでも、「アルファ・ロメオ・アルファスッド」のものに換装されていた。2015年7月。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など数々の著書・訳書あり。

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