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BMW 640i xDriveグランツーリスモMスポーツ(4WD/8AT)

ノータイでもBMW 2018.11.08 試乗記 高平 高輝 「BMW 6シリーズ グランツーリスモ(GT)」に試乗。5mを優に超えるビッグサイズのボディーにハッチゲートを備えた、BMWのモデルラインナップにおいて“変化球”ともいえるポジションのクルマに、果たして「駆けぬける歓び」はあるのだろうか。

5から6へ、サイズもステップアップ

エリートビジネスマンがさっそうと乗りこなす姿をどうしても想像してしまうBMWの中にあって、GTはちょっと異質な雰囲気を身にまとっている。乱暴に言ってしまえば、屋根がちょっと高くてテールゲートを備えているだけなのに、それでクールで洗練されたエグゼクティブな雰囲気とはちょっと違う“オフ感”をも漂わせているのだから、やはりクルマの姿形は重要だ。従来の「5シリーズGT」から6シリーズGTへとネーミングが変更された「640i GT」は、バリバリ仕事をこなすだけでなく、家族との時間も大切にしていますという、人もうらやむワークライフバランスのお手本生活を送るカッコいいダディーが乗っているはず、と感じさせられるのだ。

そもそもBMW 6シリーズといえば昔から流麗で贅沢(ぜいたく)な大人のクーペという認識だったが、今では2ドアの「クーペ」のみならず、「カブリオレ」も4ドアの「グランクーペ」もラインナップされ、今度はGTも6シリーズの仲間に入った。ニッチなモデルのさらにニッチなスペースも派生モデルできっちり埋めるBMWの戦略による、まさに隙間のない製品ラインナップである。

もっとも、性能や用途について欲張りになればなるほどプレミアム感が薄れるものだが、子どももおじいちゃんも犬も荷物も詰め込んで出掛けるミニバンのような、庶民派な雰囲気まではいかないのがさすがBMWというところだろうか。高性能と多用途を欲張りに追求しても、それぞれにきちんと上質さが伴っているからだろう。

通常の「5シリーズ セダン」や「ツーリング」では間に合わない、あるいは当たり前すぎてつまらないという人が日本にどれほどいるのかは知らないが、本国ではカンパニーカーではないパーソナル感を求めるユーザーにはちょうどいいキャラクターなのかもしれない。クーペではちょっと足りないが、SUVまでは要らないし、背が高すぎるという人たちに、これならどうです、といわば当て書きしたのが6シリーズGTである。

ちなみに先代にあたる5シリーズGTより25mm低くなった1540mmの車高は、機械式駐車場でもギリギリ大丈夫(機械式パーキングの多くは1550mmまで)の高さだが、とはいえ、それならウチのマンションの駐車場でも大丈夫か、と喜ぶのはまだ早い。先代よりも約10cm伸びたボディーはBMWのラインナップ中最大級、全長5105mm、全幅1900mmは5シリーズベースというより、もはや事実上「7シリーズ」と変わらない(3070mmのホイールベースは7シリーズと同一)からである。

「5シリーズ」から「6シリーズ」へと、上級移行して登場した「BMW 6シリーズ グランツーリスモ」。今回テストした「640i xDriveグランツーリスモMスポーツ」の車両本体価格は1081万円(2018年8月30日付けで全車にヘッドアップディスプレイが標準装備となり、価格も1116万円にアップした)。
「5シリーズ」から「6シリーズ」へと、上級移行して登場した「BMW 6シリーズ グランツーリスモ」。今回テストした「640i xDriveグランツーリスモMスポーツ」の車両本体価格は1081万円(2018年8月30日付けで全車にヘッドアップディスプレイが標準装備となり、価格も1116万円にアップした)。拡大
全長5105mm、全幅1900mmという堂々たるサイズを誇る「6シリーズ グランツーリスモ」。フットプリントはフラッグシップサルーン「7シリーズ」とほとんど同じ。
全長5105mm、全幅1900mmという堂々たるサイズを誇る「6シリーズ グランツーリスモ」。フットプリントはフラッグシップサルーン「7シリーズ」とほとんど同じ。拡大
全高は1540mmと、標準的な仕様の「7シリーズ」よりも60mmほど高くなっている。
全高は1540mmと、標準的な仕様の「7シリーズ」よりも60mmほど高くなっている。拡大
リアエンドに備わるアクティブスポイラーは、110km/hを超えると自動で立ち上がるほか、車内のスイッチで手動で操作することもできる。
リアエンドに備わるアクティブスポイラーは、110km/hを超えると自動で立ち上がるほか、車内のスイッチで手動で操作することもできる。拡大
「640i xDriveグランツーリスモMスポーツ」には20インチのタイヤ&ホイールが標準装備となる。タイヤは「ピレリPゼロ」のランフラットタイプが装着されていた。
「640i xDriveグランツーリスモMスポーツ」には20インチのタイヤ&ホイールが標準装備となる。タイヤは「ピレリPゼロ」のランフラットタイプが装着されていた。拡大
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最新技術全部載せ

日本仕様の6シリーズGTには2リッター直4の「630i」と3リッター直6(640i)の、ともに直噴ガソリンターボエンジンが用意され、6気筒モデルは電子制御4WDシステムの「xDrive」に加えて「Mスポーツ」仕様となる。さらに後輪操舵付きインテグレーテッドアクティブステアリングやアダプティブエアサスペンション(630iはリアのみエアサスペンション)が標準装備されており、文字通りBMWの最新技術メニューを全部詰め込んだ贅沢フルコースのようなモデルである。となれば1000万円オーバーは致し方のないところだろう。

例によって「ツインパワーターボ」と称する直6直噴ツインスクロールターボユニットは、340ps/5500rpmと450Nm/1380-5200rpmを発生。これまた例によってスポーツ仕様の8段ATとの組み合わせになる。パワートレインについてはまったく不満がない。アルミや超高張力鋼板の採用を進めた結果、先代モデルよりも150kgほど軽量化されているというが、それでも車重は2t余りあるので、俊敏というほどの身のこなしは持ち合わせていないものの、流れるように滑らかにスピードに乗せてくれる洗練された6気筒とATがそれを補って余りあるし、それ以上にゆっくり流している時でも微妙な操作に応えるダイレクトでリニアなレスポンスが、上等なエンジンであることを感じさせる。こういうエンジンが日本車に欲しいとつくづく思う。もちろん全開にすれば0-100km/h加速は5.3秒、最高速は250km/hというから、まったく不足ないどころか、全長5m超、車重2t余りの大型ハッチバック車としては大変な俊足といえるだろう。

「640i xDriveグランツーリスモMスポーツ」には、アダプティブエアサスペンションが標準装備となっており、積載量や速度に応じて車高を自動調整する。
「640i xDriveグランツーリスモMスポーツ」には、アダプティブエアサスペンションが標準装備となっており、積載量や速度に応じて車高を自動調整する。拡大
フロントに縦置きされる3リッター直6ターボエンジンは最高出力340ps、最大トルク450Nmを発生。今回のテストでは380km余りを走行して10.0km/リッターと、カタログ値に迫る燃費を記録した。
フロントに縦置きされる3リッター直6ターボエンジンは最高出力340ps、最大トルク450Nmを発生。今回のテストでは380km余りを走行して10.0km/リッターと、カタログ値に迫る燃費を記録した。拡大
灯火類にはすべてLEDを採用。リアコンビランプはC字型に点灯する。
灯火類にはすべてLEDを採用。リアコンビランプはC字型に点灯する。拡大

時々、ブルルン

パワートレイン同様、乗り心地も基本的に穏やかで滑らかである。Mスポーツを名乗ってはいるものの、特段研ぎ澄まされたスパルタンさは感じられず、ひと言で言えばラグジュアリーである。最新のADAS(先進運転支援システム)も当然完備しているから、それを適宜利用してハイウェイをひた走るのは最も得意とするところである。

ただし、速度と路面によっては、例えば橋の継ぎ目を左右一緒に乗り越えるような場面では、後輪のゴロン、ブルンという大き目の振動が明確に伝わってくる。20インチの大きなランフラットタイヤのせいかもしれないが、可変ダンパー付きエアサスペンションをもってしてもタイヤが重い感じが拭えないのが惜しい。これは以前の5シリーズGTでも弱点だったように思う。

2リッター直4を搭載する「630i」ともども、ACCやレーンキープアシストといった先進運転支援システムが標準装備となる。
2リッター直4を搭載する「630i」ともども、ACCやレーンキープアシストといった先進運転支援システムが標準装備となる。拡大
インテリアはグレーとピアノブラックがベースで、アクセントにシルバーが配されている。
インテリアはグレーとピアノブラックがベースで、アクセントにシルバーが配されている。拡大
荷室の容量は610リッターから1800リッター。床下にトノカバーの収納スペースが設けられているのがスマートだ。
荷室の容量は610リッターから1800リッター。床下にトノカバーの収納スペースが設けられているのがスマートだ。拡大

大きさを気にしない人に

室内は当たり前だが広々ルーミー、通常状態で610リッター、後席バックレストを倒すと1800リッターまで容量を拡大できるラゲッジスペースは広大と言ってもいいぐらいだ。トノカバーはフロア下に格納できるようになっており、かさばる荷物を積む場合のこともきちんと考慮してある。従来モデルよりもルーフもリアデッキも低めてSUV感はずっと薄れたが、使い勝手をおろそかにしていないところが生真面目なBMW流である。ちなみに、2ウェイの開閉方式だった先代モデルのテールゲート(リアデッキ部分だけをセダンのトランクのように開閉できた)は、一般的なものにあらためられているが、これだけでずいぶんと重量を削ることができたはずである。

7シリーズ並のボディーはさすがに大きいが、その分室内も、自転車でも何でも飲み込むようなラゲッジスペースも余裕たっぷりである。私の手(生活)にはちょっと余るが、これを使いこなす人はどんな風に暮らしているのだろうか、雪が舞い始めた高速道路を飛ばして家族が待つ軽井沢の別荘に急ぐのだろうか、といろいろ妄想してしまうBMWである。

(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)

各所にアルミや超高張力鋼板を用いることで、実質的な先代モデルといえる「5シリーズ グランツーリスモ」よりも大型化していながら、150kg程度車重が軽くなっている。
各所にアルミや超高張力鋼板を用いることで、実質的な先代モデルといえる「5シリーズ グランツーリスモ」よりも大型化していながら、150kg程度車重が軽くなっている。拡大
シート表皮にはしっとりとした風合いのダコタレザーを採用。テスト車にはセットオプション「コンフォートパッケージ」に含まれるベンチレーション機能が備わっていた(ヒーターは標準)。
シート表皮にはしっとりとした風合いのダコタレザーを採用。テスト車にはセットオプション「コンフォートパッケージ」に含まれるベンチレーション機能が備わっていた(ヒーターは標準)。拡大
ホイールベースの長さと全高の高さが、後席にもゆとりのスペースをもたらす。背もたれの角度調整も可能。
ホイールベースの長さと全高の高さが、後席にもゆとりのスペースをもたらす。背もたれの角度調整も可能。拡大

テスト車のデータ

BMW 640i xDriveグランツーリスモMスポーツ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5105×1900×1540mm
ホイールベース:3070mm
車重:2010kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:340ps(250kW)/5500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1380-5200rpm
タイヤ:(前)245/40R20 99Y/(後)275/35R20 102Y(ピレリPゼロ)※ランフラットタイヤ
燃費:10.9km/リッター(JC08モード)
価格:1081万円/テスト車=1181万6000円
オプション装備:ボディーカラー<ミネラルホワイト>(9万円)/イノベーションパッケージ(26万円)/コンフォートパッケージ(36万6000円)/ピアノフィニッシュブラックトリム(6万1000円)/パノラマガラスサンルーフ(22万9000円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:5925km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:384.7km
使用燃料:38.3リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.0km/リッター(満タン法)/9.7km/リッター(車載燃費計計測値)

BMW 640i xDriveグランツーリスモMスポーツ
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