輸入車ブローカーで大もうけ

ジョーとディーンは1万ドルの原資で投資グループ「BBC」を設立し、金持ちの友人たちから資金を集めることに成功した。BBCとはもともとボンベイ・バイシクル・クラブの略称だったが、途中でビリオネア・ボーイズ・クラブに変更された。億万長者のドラ息子たちが集まっていたのだから、この名称のほうが適切である。

投資グループと称してはいるものの、実態は怪しいものだ。本当は資金運用など行ってはいない。甘言でカモを釣り、かき集めた金で派手に遊んでいたのだ。確かに、最初のうちは輸入車のブローカーとして商売をしていた。当時はドルが強く、ヨーロッパでクルマを安く仕入れてアメリカで高く売り、利ざやを稼ぐことができたらしい。BMWの「M5」や「M3」なら、入った途端にすぐ売れていく。

特に人気があったのが「M635CSi」だったという。あぶく銭を握った若きセレブたちは、資力を誇示するためにハイパワーな希少車を競って手に入れようとした。いかにも浅はかな行動に見えるが、数年後にわが国でも同じような事態が発生している。東京ではあちらこちらに自動車の並行輸入屋が店を開き、金ピカのアクセサリーで飾った成り金を集めた。バブル期にBMWがもてはやされたのは日米共通である。なにか理由があるのだろうか。

クラブでかかっている曲は、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの『リラックス』やデビッド・ボウイの『レッツ・ダンス』。日本でもヒットしたナンバーで、聞いているとあの頃の気分がよみがえってくる。テレビ画面に映し出されているのは、ジョン・ザッカリー・デロリアンの裁判が始まったというニュースだ。デロリアン・モーター・カンパニーは社長の逮捕もあって1982年末に破綻し、「DMC-12」は製造中止に追い込まれていた。

(C) 2017, BB Club, LLC. All rights reserved.
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「BMW M635CSi」
“世界一美しいクーペ”と呼ばれた初代「6シリーズ」の「M」モデル。日本や北米では「M6」として販売されたが、本国仕様のM635CSiが希少性を評価されて高い人気を得ていた。
「BMW M635CSi」
	“世界一美しいクーペ”と呼ばれた初代「6シリーズ」の「M」モデル。日本や北米では「M6」として販売されたが、本国仕様のM635CSiが希少性を評価されて高い人気を得ていた。拡大
 
第182回:M635CSiの輸入から始まった狂乱の日々『ビリオネア・ボーイズ・クラブ』の画像拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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