BMW Z4 M40i(FR/8AT)
Mの好きにはさせない! 2018.11.13 試乗記 BMWのオープントップスポーツ「Z4」の新型がいよいよデビュー。先代モデルよりもクルマ全体の洗練化が進んだ一方で、ボディーサイズはさらに拡大……。果たしてその運動性能は!? 試乗を通じてまだ見ぬ“姉妹車”にも思いをはせた。立ち位置はソリッドなスポーツカー
エンジニアに話を聞く限り、どうやらBMWにとってZ4というモデルはなかなか悩ましいもののようだ。
というのも、「Z3」の流れを受け継いだ初代はBMWなりのライトウェイトスポーツとして打ち出されたのに対して、市場はより高い実用性や快適性を要求。そこで2代目はキャビンやストレージに余裕をもたせた上でメタルトップを採用するも、市場からはクルージングカーになっちゃったと評価されたという。
個人的には先代Z4の適切な穏やかさは嫌いではなかったが、これは“駆けぬける歓び”の最右翼たるキャラクターのモデルにとって、“歓べない”話である。途中、FIA-GT3適合のレースモデルを投入したのは日本のクルマ好きにもなじみ深いだろうが、レギュレーションの変更とともに車体は大きい方が有利ということで「6シリーズ」に取って代わられた。
となると、新しいZ4は再びBMWを代表するソリッドなスポーツカーとして立ち位置を定めるのが自然な流れだ。さすれば「スープラ」の復活をもくろむトヨタとの協業はその絶好の追い風となったかもしれない。ちなみに今回参加した新型Z4の試乗会の場では、トヨタ絡みの質問はすべて本社広報側にブロックされた。いわく、それは彼らのステートメントを待てと。当然といえば当然だ。だからここから先で時々書いてしまうであろうトヨタだのスープラだのという話は、全部僕の臆測とか妄想とかということでご容赦願いたい。
新型Z4のディメンションは前型に対して、全長が85mm長い4324mm、一方でホイールベースは26mm短い2470mmとなっている。そして全幅は74mm広い1864mm、全高が13mm高い1304mmだ。すなわちホイールベース/トレッド比は1.6を下回るほどスクエア寄りになっており、回頭性を歴然と高めてきたことが伝わってくる。ちなみに現状で判明している90系スープラのディメンションもこれらの数値に酷似しているところをみると、シャシーまわりの基本ジオメトリーはほぼ同一とみて間違いないだろう。その足まわりについてはシャシーエンジニア氏いわく、「CLARプラットフォーム」を用いる新型「3シリーズ」などとはまったく別物だという。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
パワーユニットは3種類
屋根をメタルトップから幌(ほろ)に戻すことによって実現したのは約40kgの軽量化。新型Z4はそれを車体剛性アップ等の動的質感向上や、上位グレードでのメカニカルLSDの標準装備化などで相殺している。結果、車重は先代とほぼ同等というから、日本の車検証上では1.5~1.6t前後に収まることになるだろう。
相当割り切られたディメンションである一方で、実用性は可能な限り確保したいというわけで、新型Z4は屋根の開閉状態にかかわらず281リッターのトランク容量を確保している。さらにシート背後にはわずかながらも荷物を置ける段差が設けられており、薄いかばんやブリーフケース程度ならそこに収めることもできそうだ。
内装のデザインは最新のBMWのイメージを反映し、「8シリーズ」と同様メーターナセル内には液晶パネルが収まるも、ロードスター的な軽快かつスパルタンという演出は乏しい。が、その質感は確実に前型より高まり、「ポルシェ718ボクスター」や「ジャガーFタイプ」といったライバルを思い浮かべてもそれを上回るところにある。ちなみに生産を担当するのは先代と同様、マグナシュタイアのグラーツ工場で、これは90系スープラも同様だ。
新型Z4のグレード構成は搭載エンジンによって「20i」「30i」「M40i」に区別される。うち20iと30iにはチューニング違いの2リッター直4直噴ターボを搭載、最高出力は20iが197ps、30iが258psとなる。そして今回試乗したのは「ローンチエディション」に相当するM40i。B58系3リッター直6直噴ターボは340psのパワーを5000-6500rpmの範囲で、そして500Nmのトルクを1600rpmから発生する。いずれも組み合わせられるのはロックアップや変速速度をスポーティーにセットアップしたローンチコントロール機能付きの8段ATで、M40iの場合は後軸メカニカルLSDも標準装備。その最高速は250km/hに自主規制されるが、0-100km/h加速は4.5秒とその動力性能は「718ボクスターS」に肉薄する。
「曲がる」というよりも「回る」
走りはじめから驚かされたのはその操舵応答性だ。小径で握りの太い、ある意味BMWらしいステアリングを動かせば、いわゆる遊びはほんのわずか、数mm程度のところからゲインが素早く立ち上がり、バリアブルレシオのギア比もあってそのゲインはグイグイと高まっていく。この点、確かにアタマ側が重く修正も容易なFRは、MRなどに比べると攻めた設定が可能だ。が、先述の通り新型Z4は異例ともいえるホイールベース/トレッド比でも回頭性優先の設定となっている。結果としてそのフィールはかなりスパルタンなスポーツカー、例えば「ホンダS2000」あたりを思い出させるほどのビリビリぶりで、最初は真っすぐ走らせるのにもちょっと気を張るほどだった。その割には乗り心地がやたらといいというのも、戸惑いのひとつの理由かもしれない。
ここまで攻めたセットアップならば、さぞやキビキビ走るのだろうと踏んでいたワインディングでは案の定……というか、予想を上回るほどの身のこなしにこれまた驚かされる。鼻先の動きと着座位置のヨーとの間の微妙なズレであるとか、後軸まわりのモヤッとしたレスポンスであるとか、そういう前型の旋回感と、新型の旋回感との間には、何の連続性もない。ドライバーは旋回軸のど真ん中にいて、その車体は曲がるというより回ると称する方がふさわしい、そんな印象だ。
運動性能目標は「M2」超え
8段ATのリンケージ感はトルコンとしてはギリギリのところまでタイトに仕立てられているから、アクセルのオン/オフに対しての車体側の受け止めも生き生きしており、かつLSDは想像以上に明快な差動感を示し……と、とにかくあらゆる要素が明確な曲がり志向で、その好戦的なキャラクターにはさすがに従来のお客さんにとってはシビアすぎないかと心配にもなる。運動性能目標は「M2」超え、ニュル7分55秒台……と、物騒なエピソードにも合点がいくというものだ。
もっとも、BMWにしてみればこれこそが確信犯のキャラクター設定なのだろう。今度こそ、「Zシリーズ」をブランドのトップアスリートに位置づける。Mの好きにはさせないと。ディメンションしかり、重心設定しかり、そこにお手盛り感がうかがえないのは、これまたトヨタとの協業がいい側に作用したということではないだろうか。そしてこの、新型Z4の攻めっぷりを知るに、トヨタの側の仕上がりは、スープラという名から受ける印象をはるかに飛び越えたものになることは不可避……もとい確実だと思う。
(文=渡辺敏史/写真=BMW/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
BMW Z4 M40i
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4324×1864×1304mm
ホイールベース:2470mm
車重:1610kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:340ps(250kW)/5000-6500rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1600-4500rpm
タイヤ:(前)255/40ZR18 95Y/(後)275/40ZR18 99Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:7.4-7.1リッター/100km(約13.5-14.1km/リッター、NEDC複合モード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
ボルボXC40ウルトラB4 AWD(4WD/7AT)【試乗記】 2026.6.6 ボルボのエントリーモデルにしてブランドの屋台骨を支える「XC40」も登場からはや8年。これまで内外装やパワートレインにおいて地道なアップデートが重ねられてきたコンパクトSUVは、いかなる進化を遂げたのか。トップグレード「XC40ウルトラB4 AWD」の走りを報告する。
-
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】 2026.6.5 「ホンダ・インサイト」が電気自動車(BEV)として復活! ……というよりは中国工場製BEVにその名が与えられて日本にやってきた。さまざまな事情により、国内で販売されるのはわずか3000台のみ。日本人は“限定”に弱いとされるが、果たしてこの場合はどうか。
-
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】 2026.6.3 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
NEW
モデルチェンジの「ここは絶対変えちゃダメ」は一体誰が決めるのか?
2026.6.9あの多田哲哉のクルマQ&Aクルマのモデルチェンジにおいて、従来型から「変えるところ」「変えないところ」は、どのようなプロセスで決まるのか? さまざまなクルマの開発を取りまとめてきた多田哲哉さんに実情を聞いた。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS(4WD)【試乗記】
2026.6.9試乗記スバルから電気自動車(BEV)の第2弾モデルである「トレイルシーカー」が登場。ルーフの長いステーションワゴンスタイルのクロスオーバーという、いかにもスバルらしいBEVは、機能的で快適で、走らせても楽しい万能なマシンに仕上がっていた。 -
第337回:「ルーチェ」に比べればタダ同然
2026.6.8カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。フルモデルチェンジで3代目に進化した「日産リーフ」を夜の首都高に連れ出した。「非常に良くなった」「静かで快適」といった評判を耳にする量販・量産BEVのパイオニアに、カーマニアは何を感じた? -
ざわめきとともに「フェラーリ・ルーチェ」発進! 業界を揺るがす名門フェラーリの秘めたる野望とは?
2026.6.8デイリーコラム2026年5月末に披露されるや、世界的に物議を醸したフェラーリ初の電気自動車「ルーチェ」。意外すぎるルックスの新型車が目指すところは? フェラーリの事情をよく知る西川 淳が“異端の跳ね馬”の核心に迫る。 -
ホンダ・クロスカブ110ライト(4MT)【レビュー】
2026.6.8試乗記125ccクラスなのに原付一種扱いとなる、世にいう新基準原付。そのニューモデルである「ホンダ・クロスカブ110ライト」に、普段の道で試乗した。厳しい環境規制と、それに対するある種の救済措置が生んだ数奇なマシンの、ちょっと不思議な使用感を報告する。 -
日産リーフB7 G(後編)
2026.6.7思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産リーフ」に試乗。後編では新しいシャシーやモーター、バッテリーが織りなす走りの印象について聞く。第3世代のリーフは、ワインディングロードでどんな振る舞いを見せたのだろうか。















































