8~14の間でリニアに変化する圧縮比

圧縮比を可変とするために用いるのはクランク側に配された電動アクチュエーターで、1:243という強力な減速比を持つギアを介してモーターのアウトプットを低回転高トルク化させる仕組みだ。最終的には“2トン超え”という強大なトルクは、コンロッドを含む4つのリンクをピストン位置に関わらず絶え間なく動かし、上死点が最大で6mm移動。圧縮比が8~14の間でリニアに変化するという。

もちろん低圧縮側の設定値は高負荷時にターボによって大きなトルクを得ること、そして高圧縮側の設定値はリーンバーンによって低負荷時に最大効率を得ることを目的としている。日産のエンジニアによれば、この8~14という圧縮比は、世の2リッターガソリンエンジンのほぼすべてをカバーしており、下側は最高出力381psを発生する「メルセデスAMG A45」の、上側は「マツダ・アクセラ」などに搭載される「SKYACTIV-G」のそれと近似しているそうだ。

とはいえ、それは言うは易しの話。圧縮比が変わるということは、当然ながら燃焼パターンは二乗的に増えていくわけで、速度や負荷状態を鑑みながらどのように燃やしていくか、そこにターボやらCVTやらという他の要素も加わるとあらば、ECUのマップは膨大な量に及ぶ。現状のECUは32ビットだが、メモリ容量や処理能力はギリギリといったところだろう。そして最も大変なのは、この膨大なマップは走り込みによる実地的なデータなくして成立しないということだ。ここばかりはマンパワーの勝負となるわけで、このエンジンを成立させる上での泥臭い苦労のひとつといえるだろう。

圧縮比の可変状態はメーター内のインフォメーションモニターで確認することができ、いざ走りだしてみると、予想とは裏腹に圧縮比変更が相当頻繁に行われていることがインジケーターから読み取れた。ターボ車に乗っている人であれば、「ブーストメーターの動きよりもう少し忙しい感じ」と言えばその頻度をイメージしてもらえるだろうか。すなわち、「パーシャルスロットルをキープしながらできるだけ高圧縮のリーン域を使い続ける」というアクセルワークは、相当シビアとみていい。この辺りは対ノッキングのためのマージンも含まれており、プログラム的にはまだ知見を重ねて伸ばしていく領域だという。

VCターボエンジンのカット模型。写真向かって左側に電動アクチュエーターが備わっている。
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圧縮比の調整幅は8~14とされている。
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圧縮比の状態は、メーター内に装備されたインフォメーションディスプレイで確認できる。
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