いまこそ“らしさ”を取り戻す時

これらの功績に対して、ゴーン氏の報酬は妥当だったか、それとも過大だったか。

近年は国内他社のCEOの報酬額も上がっているが、ゴーン氏の報酬額には当初から批判が集まっていた。今回の事件で対象になっているのは2011年3月期から5年間の報酬で、有価証券報告書には毎年10億円前後が記載されていた。しかし、実際には5年間で100憶円近い報酬があり、およそ半分を申告していなかったとされる。その理由として、「高額報酬に対する世間からの批判をかわすことで、日産ブランドを守りたいゴーン氏の意向」との報道もある。

日産は本件についてのプレスリリースで「長年にわたり、実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載」し、かつ「内部調査によって判明した重大な不正行為」があったことを明言している。前者については比較的情報が出ているが、後者の重大な不正行為については、いまひとつよく分からない。一部報道にある個人用住宅や家族旅行の支払いなどを指しているのではないだろう。特捜が動いたということは日産の屋台骨をゆるがすレベルの事案のはずだが、実態があまりに見えにくい。これが3つ目の違和感だ。

この先、日産はどうなるのか? まずはゴーン氏を解任し、西川氏が会長に就くといわれているが、問題はそのあとだ。

フランス政府が株主であるルノーとのアライアンスをどうするかで、日産の運命は変わる。1999年時点では、ルノーなくして日産は独り立ちができなかったが、いまの日産は違う。むしろルノー側にメリットをもたらす存在なのだ。冒頭で“Twitter民の祭り”の様子を伝えたが、もともと日産を愛していたであろう人々は、違った捉え方をしている。「いまこそ、日産らしさを取り戻してほしい」。日産ファンからはそんな声が聞こえてくる。ただし、フランス人の恋人に感化された人に「本来の姿に戻って」と言ったところで、そうはならない。19年間という時間はあまりに長かった。

企業統治や経営という観点ではゼロどころかマイナスからの出発だが、この苦しいときだからこそ、日産の長所が社員や関係者、何より日産ファンのよりどころになるのではないだろうか。本来の日産とは? 日産の良さとは、長所とは? その問いかけの先に光が見えるのではないだろうか。まずは事態の成り行きを見守りつつ、新生・日産の船出を待ちたい。

(文=林 愛子/写真=日産自動車/編集=関 顕也)

日産自動車の本社が東京・銀座から神奈川県横浜市のみなとみらい21地区へと移ったのも、ゴーン時代のできごとのひとつ。写真は2007年1月、新社屋起工式での様子。
日産自動車の本社が東京・銀座から神奈川県横浜市のみなとみらい21地区へと移ったのも、ゴーン時代のできごとのひとつ。写真は2007年1月、新社屋起工式での様子。拡大
ゴーン体制19年の間に、自動車の自動運転技術開発も大きく前進。日産も運転支援システム「プロパイロット」搭載モデルを順次リリースしている。写真は2013年、最先端IT・エレクトロニクスの見本市「CEATEC JAPAN 2013」において、自動運転の実験車両に試乗したゴーン氏。
ゴーン体制19年の間に、自動車の自動運転技術開発も大きく前進。日産も運転支援システム「プロパイロット」搭載モデルを順次リリースしている。写真は2013年、最先端IT・エレクトロニクスの見本市「CEATEC JAPAN 2013」において、自動運転の実験車両に試乗したゴーン氏。拡大
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