インフラも法整備も……問題山積のニッポン

というわけで、日本でもスクーターの分野では広がりを見せそうな電動バイクだが、たとえ十分な航続距離が確保されていたとしても、実用上の問題がある。それがパワーにまつわる法規制だ。

電動バイクにはエンジンで言うところの排気量が当てはまらないため、定格出力で区分される。定格出力が600W以下なら原付一種(50cc以下)、600W超1000W未満なら原付二種(50cc超~125cc以下)、1000W以上だと普通二輪免許(125cc超)という具合だ。

実はこれがくせ者で、ごく簡単に言えばエンジンに対してスペックの差がある。特に600W以下の原付一種相当だと走行シーンによっては危険を感じるほどだ。事実、ヤマハがラインナップしている「Eビーノ」は定格出力580W、最高出力は1.6psに過ぎず、4.5psを発生する現行のエンジン版「ビーノ」との違いは明らか。その加速性能がいかに物足りないかは推して知るべしだ。

このようにインフラのみならず、法整備も立ち遅れていると言わざるを得ない日本では、電動バイクのメジャー化に向けてまだまだクリアすべき課題が多い。ゆえにBMWの「Cエボリューション」やアディバの「VX-1」など、出力制限を受けない普通二輪相当の電動スクーターが、まずこのカテゴリーの先鞭(せんべん)をつけていくことになるだろう。それにしてもコストや車重の問題は決して小さくないため、こればかりはユーザーの率直な反応を見るしかない。

電動バイクを取り巻くこの国の環境は、現段階では決して明るいとはいえない。ただし、モータースポーツの分野になるとM-TEC(無限)やヤマハといった国内メーカーががぜん躍動。サーキットや競技を通し、新しい流れが起ころうとしているのも事実だ。そのあたりの話はまたあらためてお届けしたい。

(文=伊丹孝裕/写真=BMW、キムコ、ゴゴロ、ハーレーダビッドソン、本田技研工業、ヤマハ発動機、webCG/編集=堀田剛資)

電動スクーターの「ヤマハEビーノ」。最高出力はたったの1.6psである。
電動スクーターの「ヤマハEビーノ」。最高出力はたったの1.6psである。拡大
最高出力4.5psを発生する現行型「ヤマハ・ビーノ」。ちなみにビーノは、この代のモデルから、ホンダよりOEM供給を受けて販売される「ホンダ・ジョルノ」の姉妹車となった。
最高出力4.5psを発生する現行型「ヤマハ・ビーノ」。ちなみにビーノは、この代のモデルから、ホンダよりOEM供給を受けて販売される「ホンダ・ジョルノ」の姉妹車となった。拡大
2017年5月に日本に導入された「BMW Cエボリューション」。最高出力48ps、0-100km/h加速6.2秒という堂々とした性能を誇る。その分、値段も156万2000円と堂々としている。
2017年5月に日本に導入された「BMW Cエボリューション」。最高出力48ps、0-100km/h加速6.2秒という堂々とした性能を誇る。その分、値段も156万2000円と堂々としている。拡大
2018年の東京モーターサイクルショーに出展された「無限・神電 七」。同車は同年6月のマン島TTレースに投入され、電動車によって競われるZeroクラスでコースレコードを更新し優勝。無限は同クラス5連覇を成し遂げた。
2018年の東京モーターサイクルショーに出展された「無限・神電 七」。同車は同年6月のマン島TTレースに投入され、電動車によって競われるZeroクラスでコースレコードを更新し優勝。無限は同クラス5連覇を成し遂げた。拡大
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