個性を生かしながら味わい深く

3皿目にはヒージャー(ヤギ肉)の料理が登場した。

筆者は20年近く前に、ヒージャー汁を一度だけ食べたことがある。その時は、ヤギ特有の強烈な臭いにおののき、食べることができなかった。それ以降、一度も口にしたことはない。

とはいえ、沖縄ではハレの日に欠かせないおもてなし食材である。今ではもう禁じられているが、50年ほど前には、頸(けい)動脈を切って血を抜いたヤギを、一匹丸ごとたき火の中に入れて焼くということが行われていた。

写真集『岡本太郎の沖縄』(NHK出版刊)には、その様子をとらえたモノクロ写真が収められている。とても残酷な光景にも見えるが、まわりで見守る人々は、みな笑顔だ。当時の沖縄の人は、それも祭りとしてとらえていたのだろう。

さて「ヒージャーのロワイヤル」。

運ばれてきたのは洋風茶わん蒸しといった感じの一皿だ。

卵とブイヨンをあわせて蒸し、卵豆腐のように固めたもののことをロワイヤルというが、樋口シェフは地元のハーブを与えて育てた南城ハーブヤギの骨からブイヨンを取り、血以外の肉をミンチにしてコンソメを取り、温かいロワイヤルに仕上げていた。

口に入れると、プルプルとした弾力と滑らかな舌触りのなかに、小さく刻まれたヒージャーが入っているのがわかった。その食感はやわらかく、チキンに近い。

心配していた臭みもあるにはあるが、かなり抑えられている。ヤギの個性を出しながら、上品で食べやすい料理に仕上げられていたことに、心底驚いた。

6皿目「ローゼルのグラニテ」。メイン前の口直しとして、爽やかな酸味のローゼル(ハイビスカスティーに用いられるフヨウ科の植物)をグラニテにし、炭酸のジュレとともに。
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7皿目「黒金豚の伊勢志摩備長炭焼き 蜂蜜風味のガストリックソースで」。黒金豚(純血種のアグー)を伊勢志摩で生産されている備長炭で炭焼きにしている。
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8皿目「マングローブ蟹のジューシー」。マングローブ蟹を生きたまま丸ごと米とパンダンリーフ、島人参と一緒に炊き込んだ米料理。濃厚な蟹の味が楽しめる一品。
8皿目「マングローブ蟹のジューシー」。マングローブ蟹を生きたまま丸ごと米とパンダンリーフ、島人参と一緒に炊き込んだ米料理。濃厚な蟹の味が楽しめる一品。拡大
9皿目「フロマージュ」。沖縄の古酒を楽しむための一皿として、琉球伝統の菓子・冬瓜の砂糖漬けにカカオニブを乗せたものと、豆腐よう、チーズをのせて。
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10皿目「島バナナのソルベと沖縄ラムのババ」。島バナナのねっとりとしたテクスチャーを楽しめるようソルベに。沖縄産のラムを染みこませたババと、黒糖の生地を添えて。
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11皿目「カーブチーのパート・ド・フリュイとドラゴンフルーツの焼き菓子」。在来柑橘のカーブチー(皮の厚い小型のみかん)やドラゴンフルーツで作った菓子をデザートに。
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