「アルナ」もあるな

日本車の1989年デビューモデルでは、いずれも初代の「マツダMX-5(日本名:ユーノス・ロードスター)」「三菱エクリプス」がリストアップされていて、それも全車が対象だ。

個人的なことを言えば、同年にデビューした「ダイハツ・アプローズ」「日産パオ」が入っていないのが遺憾である。前者は年配層や新興国にも受容されやすいセダン形状とハッチバックの利便性をいち早く両立したこと、後者は「Be-1」の後とはいえ、大手メーカーによる、かつ一般ユーザーにとって手が届きやすい限定生産車を実現したということが評価に値するだろう。

しかしイタリアでアプローズは、今日の「トヨタ・ヤリス(日本名:ヴィッツ)」のように、欧州ブランドに伍(ご)して登録ランキングの上位を占めるには至らなかった。また、パオに至っては正規輸入されなかったのだから仕方がない。

そんなことをブツブツ言いながらリストを眺めていたら、思わずわが目を疑ってしまった車名があった。あの「アルファ・ロメオ・アルナ」がヒストリックカーに認定されていたのである。

念のために記すと、アルナとは産業復興公社(IRI)傘下だった時代のアルファ・ロメオと日産自動車による合弁会社が、1983年から1987年に生産したモデルである。2代目「日産パルサー」(N12型)をベースに、「アルファ・ロメオ・アルファスッド」の水平対向4気筒エンジンを搭載していた。

イタリアでは、「アルファ史上最悪のデザイン」と酷評する人がいるいっぽうで「フラット4の低重心により、意外にスタビリティーが良かった」と回想する人もいる。

生産終了から32年が経過し、今やイタリアでも知らない人が大半になってしまった日伊産業史の断章が、「歴史車」として権威ある機関から認められていたとは。思わず涙ぐんでしまった筆者であった。

(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=Akio Lorenzo OYA、トヨタ自動車、グループPSA/編集=藤沢 勝)

「マツダMX-5」もヒストリックカーの仲間入り。2004年、イタリアのミーティングにて撮影。
「マツダMX-5」もヒストリックカーの仲間入り。2004年、イタリアのミーティングにて撮影。拡大
「アルファ・ロメオ・アルナ」。2005年にトリノで。
「アルファ・ロメオ・アルナ」。2005年にトリノで。拡大
「アルファ・ロメオ・アルナ」。短い年数ではあったが、自動車界において日伊の架け橋役を果たした。2005年ヴィテルボにて撮影。
「アルファ・ロメオ・アルナ」。短い年数ではあったが、自動車界において日伊の架け橋役を果たした。2005年ヴィテルボにて撮影。拡大
「アルナ」のヒストリックカー入りに、思わず男泣きする筆者。
「アルナ」のヒストリックカー入りに、思わず男泣きする筆者。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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