ワイヤレス充電の面倒さを解決

実はこの自動運転EXPO、オートモーティブワールド2019という巨大な展示会を構成する中のひとつであった。全6個の構成展を合計すると、出展企業・団体は1120社におよぶ。スターバックスコーヒーで「キャラメルフラペチーノ」を最後のひと泡まで飲み尽くすほどの筆者は、せっかくなので会場すべてを見学することにした。

自動車部品&加工EXPOを歩いていると、「日本一の自動車立県」というスローガンとともに愛知県のブースがあった。

愛知県自動車安全技術プロジェクトチームが展示していたのは「プローブ情報活用による道路対策」である。トヨタが豊橋技術科学大学の松尾研究室などと共同で行っている実験だ。簡潔に説明すると、車両からピックアップできるABS作動情報やGPS位置情報を分析することで、事故多発地点の路面表示や標識を改善してゆく取り組みである。

思えば1980年代末、すでにF1マシンの世界では、パイロットがアクセラレーションやブレーキングを行った地点を、ピット側で詳細に把握・分析できるようになっていた。いくらパイロットが「そこ、フルスロットルで走ったっす」と言い張っても、チーム監督から「もっと踏めて、スピード出せたじゃないか」と反論されるようになった。愛知県のプロジェクトは、その路上版にして発展形と捉えることができて興味深い。

いっぽう日本信号のブースには小さな電気自動車(EV)が鎮座していた。何の展示かと思えば、「超小型EVシェアリング向け非接触充電」だという。

シェアリングEVを試してみるとわかるが、充電ポールの設置場所の大半は屋外ゆえ、ケーブルやコネクターが汚れていると、自分の手や服まで汚れてしまう。将来はワイヤレス充電となるのが理想だろう。

しかし実はこのワイヤレス、充電所要時間の長さというハードルとともに、もうひとつデメリットがある。地上側の送電コイルが入ったプレートとクルマ側の受電コイルが内蔵されたユニットの位置をそれなりに正確に合わせないと、充電が始まらないのだ。その微妙さは、スマートフォンのワイヤレス充電をお使いの方なら、おわかりになるだろう。日本信号のスタッフによると、ドイツの高級車メーカーなどは、受電・給電双方に大きな(広い)送電コイルを採用することで、位置合わせのストレスを低下させているという。

いっぽう、大量の車両を低価格で導入しなくてはならないシェアリングEVに、そうした解決方法は適さない。そこで日本信号が考えたのは、「自動位置合わせ機構」だ。バーが送電ユニットの左右に付いていて、それにタイヤを滑らせて止めれば、容易に正しい位置に止められるというわけだ。

自動パーキングシステムが進化する傍らで、意外に忘れられていたワイヤレス給電の位置合わせという問題を、エレキではなく物理的な方法で解決してしまった日本信号に拍手を送りたい。

同時にこうした“しつけ系”デバイスについ引かれてしまうのは、「鉛筆の持ち方」はともかく、小学校入学後もかなり遅くまで箸の使い方を覚えられなかった筆者ゆえかもしれない。

「プローブ情報活用による道路対策」の資料より、愛知県豊田市のとある道路。解説によると、平均速度が速く、ABSの作動が半年で5件以上検出されているポイントであり、ここを現地調査したという。
「プローブ情報活用による道路対策」の資料より、愛知県豊田市のとある道路。解説によると、平均速度が速く、ABSの作動が半年で5件以上検出されているポイントであり、ここを現地調査したという。拡大
「速度注意」の路面表示を施したところ、平均速度が51.7km/hから51.0km/hに低下した。
「速度注意」の路面表示を施したところ、平均速度が51.7km/hから51.0km/hに低下した。拡大
非接触充電対応のマイクロEV用チャージングドック。日本信号提供。
非接触充電対応のマイクロEV用チャージングドック。日本信号提供。拡大
非接触充電用チャージングドック。送電ユニットを包むように、左右両輪をガイドする黄色いパイプがある。
非接触充電用チャージングドック。送電ユニットを包むように、左右両輪をガイドする黄色いパイプがある。拡大
車輪を誘導することで、送電ユニットの破損も大幅に軽減されるだろう。
車輪を誘導することで、送電ユニットの破損も大幅に軽減されるだろう。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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