除雪機以上・除雪車未満の便利さ

やがて恐ろしく目立つスタンドが目に入った。工事現場で見かける黄色と黒の「とらしま」でスペースを覆っている。そして中央には、それに合わせてコーディネートされたかのように、黄色い建機用ブレードが展示されていた。フォークリフトに刺してベルトで固定するだけで、簡単に“除雪車”に早変わりするという。

製造しているのはキャストという企業だ。その名から想像できるように、鋳造品メーカーであった。創業はなんと1889年。日本でいうところの明治22年である。ダイムラーとベンツが自動車を発明した3年後ということになる。船舶用エンジンの排気マニホールドやトラックのアクスル部品をはじめ、さまざまな鋳造品を製造してきた。

今回展示したパワーブレードも、金属板を溶接して作るのではなく、鋳造一体構造にこだわった。同社で技術営業部主任を務める柏村洋一氏によると、開発で苦心した点のひとつは、本体重量だ。「軽量化しすぎると作業中にブレードが浮いてしまい、雪をかいたはずなのに前輪の前に残っていました」。試行錯誤の結果、到達したウェイトは270kgだった。

開発のきっかけも面白い。「自社の敷地内で便利だったのです」と柏村氏は振り返る。

同社の本社工場所在地は福島県白河市。気象庁の平年値をもとに筆者が計算してみると、同市の過去5年(2014-2018年)の最深積雪の平均は36.8cmである。興味本位で白河出身の知人に聞いてみると、「盆地なので、降るときは湿気を吸い、どかっと降るが、新潟のように背丈を超えるほど降ることはない」と証言する。

そうした降雪には、手押しの除雪機では間に合わない。かといって除雪車を持っていても雪がないときは眠らせる期間が長すぎる。「パワーブレードなら、日頃使っているフォークリフトに装着するだけで除雪が可能であることがわかったのです」と柏村氏は語る。必要は発明の母という言葉を地で行く話だ。

キャストが製造するフォークリフトアタッチメント「パワーブレード」。
キャストが製造するフォークリフトアタッチメント「パワーブレード」。拡大
除雪のほか、土砂やスクラップにも使用可能であることをうたう。取り付け所要時間は約5分という。
除雪のほか、土砂やスクラップにも使用可能であることをうたう。取り付け所要時間は約5分という。拡大
オペレーターシートからの眺め。鋳造ゆえ、金属板を溶接したものよりも強度が高い。爪幅12cmまでのフォークリフトなら車種を問わず装着できるのも売りだ。
オペレーターシートからの眺め。鋳造ゆえ、金属板を溶接したものよりも強度が高い。爪幅12cmまでのフォークリフトなら車種を問わず装着できるのも売りだ。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

あなたにおすすめの記事
新着記事