ガソリン自動車の時代だった20世紀

初めて100km/hの壁を超えたのは、電気自動車である。1899年、カミーユ・ジェナッツィが「ジャメ・コンタン号」で105.92km/hの世界記録を樹立したのだ。その翌年には、フェルディナント・ポルシェがパリ万博に四輪ハブモーター駆動の「ローナー・ポルシェ」を出品している。ポルシェ博士は、2年後に発電用のガソリンエンジンを搭載したハイブリッドカー「ミクステ」を完成させた。

アメリカでは電気自動車の人気が高く、1900年の時点で生産台数は4000台を超えていた。ガソリン自動車のような騒音や排ガスがなく、面倒なギアチェンジを必要としないことが歓迎されたのである。しかし、1920年を過ぎた頃には、自動車はほとんどがガソリンを動力とするものになっていた。蒸気自動車は機関のコンパクト化ができずに衰退し、電気自動車は航続距離の短さという欠点を克服できなかったからだ。1908年にはフォードが画期的な大衆車の「T型」を発売し、安くて維持費もかからないガソリン自動車の優位性が拡大していく。

20世紀はガソリン自動車の時代となった。21世紀に入る直前、そこに風穴を開けたのが「トヨタ・プリウス」である。ガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせた高効率なハイブリッドシステムは、環境問題に対応するための重要な技術として広く受け入れられた。ハイブリッドカーのバリエーションは広がり、2017年にはトヨタが販売する乗用車の約40%がハイブリッド車になった。保有台数では、日本を走る軽自動車を除く乗用車の5台に1台がハイブリッド車である。

ガソリンエンジンも、対抗するかのように進化を続けている。低排気量でもターボチャージャーを使ってハイパワー、低燃費を実現するエンジンが現れ、高効率化を競っている。軽自動車の中には、ハイブリッドカーをしのぐ低燃費のモデルも珍しくない。

「三菱i-MiEV」「日産リーフ」などのピュアEVが発売され、燃料電池車の市販化も始まった。全固体電池などの新技術がブレークスルーを生み出すことも期待されている。ガソリン自動車が盤石だった20世紀とは打って変わり、21世紀に入ってからは100年前のようなエネルギーの覇権争いが繰り広げられている。

(文=webCG/イラスト=日野浦剛)

史上初めて100km/hを超えるスピードで走行した電気自動車「ジャメ・コンタン号」。
史上初めて100km/hを超えるスピードで走行した電気自動車「ジャメ・コンタン号」。拡大
フェルディナント・ポルシェが1903年に製作したハイブリッド車「ローナー・ポルシェ・ミクステ」。ポルシェは電気自動車の航続距離の短さを、エンジンによる発電装置を搭載することで克服しようとした。
フェルディナント・ポルシェが1903年に製作したハイブリッド車「ローナー・ポルシェ・ミクステ」。ポルシェは電気自動車の航続距離の短さを、エンジンによる発電装置を搭載することで克服しようとした。拡大
前例のない大量生産を実現した「フォードT型」。同車の登場により、自動車の動力装置としての内燃機関の優位性は決定的なものとなった。
前例のない大量生産を実現した「フォードT型」。同車の登場により、自動車の動力装置としての内燃機関の優位性は決定的なものとなった。拡大
1997年に登場した初代「トヨタ・プリウス」。エンジンと電動モーターの両方を走行に利用する、ハイブリッド車の嚆矢(こうし)となった。
1997年に登場した初代「トヨタ・プリウス」。エンジンと電動モーターの両方を走行に利用する、ハイブリッド車の嚆矢(こうし)となった。拡大
2010年に登場した日産の電気自動車「リーフ」。
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