ダットサンブランドをアメリカに広める

1959年にトラックとは別のシャシーを持った「ブルーバード310」が発売された。1961年には、その310をベースに1.5リッターエンジンを搭載したオープンカーの「SP310」シリーズがつくられる。最高速度155km/hを誇るスポーツカーは、1963年に行われた第1回日本グランプリでMGやトライアンフといったイギリス勢を破って優勝。日産は日本のスポーツカーの先頭を走っていた。

他の自動車メーカーも黙ってはいない。1963年にホンダが「S500」、1965年にトヨタが「スポーツ800」を発売する。1967年には「トヨタ2000GT」と「マツダ・コスモスポーツ」も登場した。日産も2リッターエンジンの「SR311」を投入するが、最新技術をつぎ込んだ他メーカーに比べると、後れを取ってしまった感は否めない。

この時期の日本の状況を、片山は直接見ていない。1960年から、彼はアメリカのロサンゼルスを拠点に活動していたのだ。当時の日産は商社に販売を委託していて、現地の状況を把握できずにいた。市場調査の名目で渡米を命じられた彼は、販売体制の不備を目にすることになる。戦後のアメリカではクルマが不足してヨーロッパ車の輸入が増加したが、ブームはすでに終了。アフターサービスを怠ったメーカーは在庫の山を築き、売れ続けていたのはしっかりとしたユーザーサポートを行っていたフォルクスワーゲンだけだった。

おざなりなやり方では存在感を示せないと考えた片山は、商社に頼らず自前の販売網を作ることを提案した。ロサンゼルスにアメリカ日産を設立し、副社長として西海岸での販売を担当する。最初は相手にされなかったが、地道に販売店をまわることで体制を整えていった。西海岸では次第に販売成績が向上し、1965年には片山がアメリカ日産社長に就任する。

クルマの品質も向上し、ダットサンの名は広く知られるようになっていく。セダンの売れ行きは好調だったが、片山は満足していなかった。ブランドイメージを上げるには、スポーツカーが必要だと考えたのだ。「フェアレディ1500」を「ダットサン・ロードスター」という名前で販売していたが、オープン2シーターではユーザー層が限られる。日常でも不便なく使うことができ、パワフルで運転が楽しいスタイリッシュなスポーツカーを売りたいと熱望していた。

1961年10月にデビューした「ダットサン・フェアレディ1500」(SP310)は、「ブルーバード310」のシャシーをベースに「セドリック」のエンジンを搭載したものだった。写真は第1回日本グランプリのB-IIクラスで優勝したマシン。ドライバーは田原源一郎が務めた。
1961年10月にデビューした「ダットサン・フェアレディ1500」(SP310)は、「ブルーバード310」のシャシーをベースに「セドリック」のエンジンを搭載したものだった。写真は第1回日本グランプリのB-IIクラスで優勝したマシン。ドライバーは田原源一郎が務めた。拡大
1967年に登場した「フェアレディ2000」(SR311)。他メーカーからはより先進的なスポーツカーが登場していたが、最高速度205km/h、0-400m加速15.4秒という動力性能は依然として一級品で、当時のレースのGT-IIクラスは同車のワンメイクレースの様相を呈していたという。
1967年に登場した「フェアレディ2000」(SR311)。他メーカーからはより先進的なスポーツカーが登場していたが、最高速度205km/h、0-400m加速15.4秒という動力性能は依然として一級品で、当時のレースのGT-IIクラスは同車のワンメイクレースの様相を呈していたという。拡大
1967年のモーターショーにおけるダットサンの展示の様子。販売網の構築と製品品質の向上により、ダットサンは米国市場で受け入れられるようになっていった。
1967年のモーターショーにおけるダットサンの展示の様子。販売網の構築と製品品質の向上により、ダットサンは米国市場で受け入れられるようになっていった。拡大
1967年当時、米国で使用されていたパンフレット。
1967年当時、米国で使用されていたパンフレット。拡大
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