仮想敵はジャガーEタイプ

アメリカでは「ジャガーEタイプ」や「ポルシェ911」の人気が高かった。走行性能もスタイルも一級品だったが、価格が高くて誰もが購入できるようなクルマではない。性能が良くて安価なスポーツカーがあれば、必ずヒット商品になる。日本に帰るたびに、片山は日産本社で自らのプランを説明してまわった。共感を示したのは、設計部長の原 禎一と若手デザイナーの松尾良彦である。片山の考えは、次第に形になっていった。

もちろん、ひとりだけの思いでクルマができあがるわけがない。日産でも、さまざまなスポーツカーの計画が立てられていた。ヤマハからスポーツカーの共同開発の提案があり、「A550X」という試作車が作られたこともある。ほかにもいくつものプランがあったが、いずれも日の目を見ることはなかった。日産には「フェアレディ」と「シルビア」があり、新たなスポーツカーを開発する必要はないという声が大きかった。

原は、1967年6月8日に第1回次期型スポーツカー連絡会を開催し、開発をスタートさせる。見切り発車だったが、11月の常務会で正式に計画が承認された。1.6リッターの4気筒エンジンを搭載し、価格は2546ドルとする計画である。高性能版だけに2リッター6気筒を与えることになっていたが、市場の状況を調査した結果、実際にはすべてのモデルが6気筒になった。

仮想敵とされたのは、ジャガーEタイプ。ロングノーズ・ショートデッキの流麗なスタイルを持ち、4.2リッター直列6気筒エンジンでパワフルな走りを実現していた。価格は約6000ドルである。当時、「メルセデス・ベンツ280SL」は2.8リッターエンジンで7000ドル、「ポルシェ911T」は2.2リッターエンジンで6000ドルだった。

1961年に登場した「ジャガーEタイプ」。流麗なスタイリングと高い動力性能を備えながら、「アストンマーティンDB4」の半分以下という価格などで話題を呼んだ。
1961年に登場した「ジャガーEタイプ」。流麗なスタイリングと高い動力性能を備えながら、「アストンマーティンDB4」の半分以下という価格などで話題を呼んだ。拡大
1964年に登場した「ポルシェ911」。ライバルである「ジャガーEタイプ」を超える高価格車となってしまったため、廉価版の4気筒モデル「912」も設定された。
1964年に登場した「ポルシェ911」。ライバルである「ジャガーEタイプ」を超える高価格車となってしまったため、廉価版の4気筒モデル「912」も設定された。拡大
1963~1971年にかけて販売されたW113型「メルセデス・ベンツSL」。「280SL」は2.8リッター直6エンジンを搭載した上級モデルである。
1963~1971年にかけて販売されたW113型「メルセデス・ベンツSL」。「280SL」は2.8リッター直6エンジンを搭載した上級モデルである。拡大
「フェアレディ1600」とコンポーネンツを共有するスペシャリティークーペとして1965年にデビューした初代「シルビア」。既に2つのラインナップを持っていることもあり、新しいスポーツカーの開発に反対する社内の声は大きかった。
「フェアレディ1600」とコンポーネンツを共有するスペシャリティークーペとして1965年にデビューした初代「シルビア」。既に2つのラインナップを持っていることもあり、新しいスポーツカーの開発に反対する社内の声は大きかった。拡大
あなたにおすすめの記事
関連記事
  • 日産フェアレディZ NISMO(FR/6MT)【試乗記】 2017.9.1 試乗記 1969年の誕生以来、6代にわたり歴史を積み重ねてきた日産伝統のスポーツカー「フェアレディZ」。デビューから間もなく9年を迎える現行モデルの実力を、高性能バージョンである「NISMO」の試乗を通して確かめた。
  • トヨタ86 GR(FR/6MT)【試乗記】 2018.4.5 試乗記 モータースポーツで培ったノウハウを生かし、足まわりやシャシーに特別なチューニングが施された「トヨタ86 GR」。市街地からワインディングロードまで走らせてみると、このモデルならではの“ピュアな味”に驚かされることになった。
  • 「フェアレディZ NISMO」新たなデザインで発売 2014.7.23 自動車ニュース ニスモのスペシャルモデル「フェアレディZ NISMO」のデザインが変更される。
  • 日産フェアレディZ バージョン NISMO(FR/6MT)【試乗記】 2009.8.20 試乗記 日産フェアレディZ バージョン NISMO(FR/6MT)
    ……527万8350円

    新型「フェアレディZ」に、ド派手なエアロで武装したスペシャルバージョンが登場。日産のモータースポーツ部門「NISMO」の名を冠するニューモデルの走りや、いかに?
  • 日産フェアレディZ バージョンNISMO Type 380RS(FR/6MT)【試乗記】 2007.12.20 試乗記 日産フェアレディZ バージョンNISMO Type 380RS(FR/6MT)
    ……569万1000円

    レーシングエンジンと同様のパーツを組み込んだ、専用の3.8リッターユニットを搭載するクルマが「フェアレディZ バージョンNISMO Type 380RS」。レーシングエンジンと聞くと気むずかしい印象があるが……。
ホームへ戻る