手ごろな価格のスポーツカーとして人気が沸騰

アメリカではスポーティーな2ドアクーペというジャンルも活況を呈していた。「フォード・マスタング」や「シボレー・カマロ」などのポニーカーである。輸入スポーツカーと比べればはるかに安価だったが、大排気量V8エンジンを搭載するモデルともなると価格は5000ドル以上。安くて高性能なモデルを投入すれば十分に勝機があると、日産の開発陣は考えた。

新型スポーツカーの北米での販売価格は、3596ドルに決まった。1ドルが360円の時代で、採算をとるためには製造原価を64万円以下に抑える必要があった。できるだけ共通部品を多く使うなどの工夫でコストダウンを果たし、1969年にまず日本国内で販売が始まる。廉価版で84万円という価格設定にはお買い得感があり、好調な売れ行きを示した。

アメリカで発売されたのは1970年。国内向けは2リッターエンジンだったが、輸出用にはパワフルな2.4リッターを用意して万全を期している。アメリカのユーザーの反応は熱狂的だった。当初の北米での販売目標は月1600台だったが、発表直後に6000台を超えるオーダーが舞い込む。生産が間に合わず、1年分のバックオーダーを抱えることになった。1万ドルのプレミア価格を付けた販売店もあったという。

アメリカの自動車雑誌『ロード&トラック』の1970年1月号では表紙を飾り、「誰が2400cc SOHC 6気筒前輪独立懸架のGTクーペを3500ドルで提供できようか?」という絶賛記事が掲載された。アメリカでは「Datsun 240Z」として販売され、ユーザーは親しみを込めてZcarと呼ぶようになる。ベスト・バリュー・フォー・マネーのZは若者から圧倒的に支持され、初代モデルは9年間で55万台を売り上げた。

アメリカ車は日本の自動車メーカーにとって憧れであり、学ぶべき手本だった。立場は逆転した。Zはアメリカに新しいスポーツカー像を見せつけたのだ。

(文=webCG/イラスト=日野浦 剛)

アメリカにて、「ダットサン240Z」とともに写真に写る片山 豊。
アメリカにて、「ダットサン240Z」とともに写真に写る片山 豊。拡大
1971年型「フェアレディ240Z」のリアビュー。ロングノーズ・ショートデッキのクローズドボディーや4輪ストラットのサスペンションなど、「フェアレディZ」は従来モデルの「フェアレディ」とはまったく異なるクルマとなっていた。
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2.4リッターの「L24」型直6 SOHCエンジン。ゆとりの排気量がかなえるパワーと耐久性が魅力で、レースでは準レーシングエンジンを搭載した「Z432」よりむしろ同エンジンを搭載した「240Z」の方が活躍した。写真は、1970年の全日本富士1000kmレースの競技車両に搭載されたもの。
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価格的に手ごろなだけでなく、高い運動性能も魅力だった「フェアレディZ」は、国内外を問わずモータースポーツでも活躍を見せた。写真は1970年のSCCAナショナルレース全米選手権にて、ジョン・モートンがドライブする「BREダットサン240Z」。
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