愉快なパチモノ『マッドマックス2』
『マッドライダー』は『フェラーリの鷹』とともに「マカロニ・エンタテインメント傑作選」として上映された。1983年の作品で、1981年に『マッドマックス2』が公開された後に続々と作られたパチモノ映画のひとつである。本家はオーストラリアだが、こちらはイタリアとスペインの合作。多くのマカロニウエスタン作品を生んだスペインの砂漠で撮影が行われている。
核戦争でオゾン層が破壊され、地球には雨が降らなくなっていた。生き残った人々が野菜を室内栽培しようとしているが、ためてあった水は尽きようとしている。遠い水源地まで給水隊を派遣すると、道中でクレイジー・ブルが率いる暴走集団に見つかった。改造バギーや装甲を施したトラックとバイク軍団が襲いかかってくる。
『マッドマックス2』そのままのシーンだ。クルマが左ハンドルで、争奪するのが石油から水に変わったところだけが違う。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』も水を探しにいく話だったが、だからといってこの映画をパクったと考えるのはもちろん間違いだ。ジョージ・ミラー監督の『マッドマックス』こそがすべての始まりである。
給水車に乗っていた少年トミーだけがクレイジー・ブルから逃れて荒野をさまよっていると、一匹狼(おおかみ)の無法者エイリアンと出会う。クレイジー・ブルたちに見つかってトミーは右腕をもがれてしまうが、痛がらないし血も出ない。本物そっくりの義手だったのだ。時は西暦3000年という雑な設定で、バイオメカニクスは当たり前の技術となっている。自動車はまったく進化していないらしく、内燃機関はバリバリの現役。エイリアンの愛車エクスターミネーターは「マーキュリー・モンテゴ」を改造したもので、1000年落ちの中古車だ。
右腕を失う設定は、1971年公開の『片腕ドラゴン』の影響を思わせる。エイリアンが使う回転しながら飛んで相手の首を切るクサリガマのような武器は、1975年公開の『空とぶギロチン』からの発想だろう。オーストラリア・イタリア・香港のエキセントリックなエンターテインメント成分をミックスした映画なのだ。
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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