現時点でのEV優位は限定的

試算した結果、最も早くEVと内燃機関車の逆転が起こるのはアメリカだった。走行6万0779kmの時点でEVの方が二酸化炭素排出量は少なくなり、そのままの状況で一生を終えることになった。一方で、最初から最後までポジションが変わらなかったのはオーストラリアだ。火力発電が多いことに加えて内燃機関のクルマの燃費が良好なまま推移するであろうオーストラリアでは、終生、内燃機関のクルマのほうがEVよりも二酸化炭素排出量は少ないのだ。

欧州はガソリン車とディーゼル車とで異なる結果となった。燃料を精製するときに排出する二酸化炭素量が違うためだろう。ガソリン車で言えば、走行7万6545kmで逆転。その後は、ずっとガソリン車のほうが排出量の多いまま推移する。「走行7万km以上使うのであれば、EVのほうが環境に優しい」というわけだ。ディーゼルは走行10万9415kmで逆転。さらに16万kmのバッテリー交換で再逆転する。つまり、「EVのほうが二酸化炭素排出量が少ない」のは、走行10万9415kmから16万kmの間だけ。他の使用期間であればディーゼルのほうが少ないというわけだ。

日本と中国は似たような結果となった。日本は走行11万kmほどで逆転、バッテリー交換タイミングに設定した16万kmで再逆転。中国も12万km弱で逆転、16万kmで再逆転。つまり、どちらの国もEVの二酸化炭素排出量が少ないと見積もれる時期は、限定的。「全体としては内燃機関のクルマのほうが長期間にわたって二酸化炭素排出量を少なくできる」という研究結果になった。日本も中国も火力発電が多く、原子力発電や再生可能エネルギーの割合が少ないというのが理由だろう。

こうして計算してみれば、意外と内燃機関のクルマも悪くないことがわかる。ただし、これは電源構成の内容によって結果が異なる。もしも、自然エネルギーや再生可能エネルギー、原子力発電の割合が変われば、よりEVに有利な結果となることだろう。そういう意味では、EVの有効性は、車両だけでなく再生可能エネルギーの利用拡大とセットで考えるべきなのだ。

まずは、しっかりと根拠のある数字を示したという意味で、マツダの今回の研究は価値あるものと言えるだろう。

(文=鈴木ケンイチ/写真=マツダ、フォルクスワーゲン グループ ジャパン/編集=関 顕也)

マツダが試算した、日本におけるガソリンエンジン車とEVの「ライフサイクルCO2評価結果」。生産時点で環境負荷の高いEVは、走行11万511kmからガソリン車よりも低負荷になっていくものの、バッテリー交換を行う16万kmで立場は再び逆転してしまう。
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写真左上から順に、アメリカ、欧州、日本、中国、オーストラリアにおける評価結果。環境保護の点でどのパワーユニットが望ましいかは、テスト車の燃料や燃費、道路環境、電力確保のエネルギーミックスといった要因で異なってくる。
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